2013 Fiscal Year Annual Research Report
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13J04410
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
小倉 康寛 一橋大学, 大学院言語社会研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | ボードレール / 抒情詩 / 彫刻 / エルネスト・クリストフ / ヴィンケルマン主義 |
Research Abstract |
本研究は19世紀中葉にボードレール、ゴーティエ、バンヴィルといった詩人たちの間で起きた彫刻に対する注目を考察対象とする。これは美術史的な観点から知られることの少ない19世紀中葉の彫刻芸術に光を当てつつも、最終的には彫刻というテーマ論を切り口に、1840年代の「芸術のための芸術」派の様相を文学史的に描き出すことを目的とする。 第1年目の平成25年度は、研究の主軸となる概念や枠組の規定を行った。主な業績は3つに整理できる。まず一橋大学言語社会研究科紀要「言語社会」への投稿論文では、ボードレールがヴィンケルマン主義を受容した様相を描きつつも、理想美の概念とモデルニテを照らし合わせる作業を行った(『ボードレールにおけるヴィンケルマン主義の受容』)。理想美とは古典主義芸術の核となる美術理論であって、彫刻の古典主義的側面を理解する上で前提となる理論である。 また詩人の集団を捉える枠組については「彫琢派」と独自に命名しつつも、彼らがロマン主義を終えたあとに出現した「時代錯誤」とも言うべき事態が起きた理由について、10月26日の日本フランス語フランス文学会秋季大会で学会発表を行った(「彫琢派におけるボードレール」)。 さらに美術史的な観点から彫刻作品を理解するにあたっての研究成果は、11月2日に日仏美術史学会例会で発表した(「ボードレール、騙し絵の彫刻」)。考察の中心となったのは、しばしば三流の彫刻家と椰楡されることの多いエルネスト・クリストフの彫像《仮面》である。ここではクリストフへの注目を軸としつつも、ボードレールが彫刻評論において抱えていた不安を描き出した。これらの論文執筆と学会発表の内容は、最終的には博士論文としてまとめられることになる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度の研究の目的は博士論文の執筆を見据え、議論の前提となる概念や枠組を整理することであった。理想美に対する考察が行われたことと、「彫琢派」というグループの概要が素描できたことは一つの進展であった。さらに美術評論についてもボードレールの目線が整理できた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は平成25年度の実績を肉付けする形で、博士論文として統合することを目指す。
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Research Products
(3 results)