2014 Fiscal Year Annual Research Report
機械と量子化学の融合によるマルチフィジックス型MEMSプロセスシミュレータの開発
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13J04457
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
伊藤 寿 東北大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 分子動力学法 / MEMS / エッチング / 半導体 / 量子化学 / CVD |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、マルチフィジックス型MEMSプロセスシミュレータの開発による最適MEMSプロセスの理論設計を研究目的としている。今年度は、シリコン酸化膜(SiO2)及びシリコンカーバイド(SiC)のエッチングにおける反応メカニズムの解明などを行った。 1. シミュレータ開発とエッチングプロセスの解明 本研究で開発しているエッチングシミュレータに関して、既に搭載済みの連続的なエッチャントの照射機能、生成分子の消滅機能に加え、新たに複数種のエッチャント照射機能、並びに照射中のエッチャントと基板の量子化学計算を別々に実行可能にするアルゴリズムを導入し、計算精度の向上を実現した。開発したシミュレータにより、SiO2、SiCのエッチングシミュレーションを行った。今年度計画されていたSF5、SF3によるSiCエッチングシミュレーションでは、多量のF原子がSi、C原子と多く結合を形成するSF5の方が、高速なエッチングに有利であることを明らかにした。シミュレーションでは、SiC表面上にC-C結合の形成が見られたが、新たにSF5とO(酸素)を同時に用いたシミュレーションを行ったところ、O原子がCOやCO2分子の蒸発によってC原子の脱離を促進し、C-C結合の形成を抑制するメカニズムが明らかとなった。エッチャントの構成比によって異なる化学反応ダイナミクスを明らかにした結果は、他に類を見ないものであり、非常に意義深い。この他、第一原理計算を活用し、原子が基板構造に侵入する際のエネルギー障壁の計算に成功した。 2. CVDプロセスシミュレータの開発 研究計画の通り、エッチングシミュレータを応用したCVDシミュレータの開発を行った。WxSiy薄膜の成膜プロセスに関しては、WF6、SiH4、H2分子の3種類を用いたCVDシミュレーションに成功しており、来年度は、より詳細な成膜メカニズムの解明を試みる予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
エッチングシミュレータの開発・改良により、複数種のエッチャントを用いたエッチングシミュレーションに成功し、また、新たにエッチャントの構成比によって異なる化学反応ダイナミクスを明らかにした。これらの結果は、海外での招待講演を含む国内外計9件の学会で発表した他、海外の査読つき学術誌にも採録されている。また、CVDプロセスシミュレータ開発においては、WxSiy薄膜の成膜シミュレーションに成功している。以上の成果や業績から、該当年度の取り組みはおおむね順調であると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
シミュレータの開発においては、高速化・大規模計算、計算精度の向上に対する取り組みを継続して行う。継続課題であるSiCエッチングシミュレーション、並びにWxSiy薄膜の成膜シミュレーションを行う。その際、平成26年度に参加した学会で実験研究者から得た情報をもとに、新たな照射ラジカル種、構成比をシミュレーションのパラメータとして取り入れ、各プロセスにおける化学反応ダイナミクスを明らかにする。本研究課題の最終年度のまとめとして、論文や学会発表での研究成果報告を積極的に行う。
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Research Products
(10 results)