Research Abstract |
本研究の目的は, 地球帰還有人宇宙機の高精度熱空力予測に向けた, 熱化学非平衡性, 輻射, アブレーション, 乱流といった極超音速気流中の宇宙機周りでの物理現象間相互作用を考慮した複合系の流れ場解析と軌道経路解析の連成解析を行うことである. 本1年目では, 交付申請書の予定通り, 極超音速流れ場における乱流解析に焦点を絞り, 乱流解析コードの構築を主に行った. 極超音速流乱流解析についてはRANSが用いられてきたが, 設計に耐えうる正確な熱流束評価はできていない. そこで, LESを用いたより詳細な加熱率解析を行う必要がある. 極超音速流における詳細な乱流解析を行うために松山らによって開発された低コストでかつ高解像なスキームを極超音速流れ場に適用した. このスキームは熱化学非平衡流計算への拡張も比較的容易であること, 強い衝撃波に対してもロバスト性を確保することが可能であり, 極超音速流れ場への拡張に適したスキームである, 現在までに, 3次元理想気体高次精度コードを構築し, チャネル乱流などで検証を行った. さらに, 並列化および流れ場データの小規模化などコードの効率化も行い, 3次元理想気体コードはほぼ完成したと言える. また, 構築したコードをJAXAが所有する衝撃風洞HIESTで計測された有人カプセル宇宙機模型周りの空力係数および加熱率と比較する予定である. しかしながら, HIESTは(1)異常加熱現象(2)空力係数に関して実験値とCFDに差異があるといった問題が存在する. これらの現象により, 計測された乱流に因るものかどうか区別することが難しくなるため, 現象解明についても並行して行った. 異常加熱現象については, 比較的高温部に位置する隔膜およびノズル等の溶融から生じる主流汚染を疑い, 数種類の金属成分を仮定した輻射解析も行っており, 可能性のある金属種を決定しつつある. また, 空力係数についても, 試験気体中の主流組成を仮定し, 実験の再現に成功した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本1年目に, 高次精度乱流解析コードの構築およびコード検証の後にカプセル周りの乱流流れ場解析を行う予定であったが, 現在コード検証の段階である. しかしながら, コード構築と検証はほぼ終了したので, カプセル模型周りの乱流流れ場解析に向けた準備は整ったと言え, 今後随時, 解析を行っていく.
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Strategy for Future Research Activity |
構築した高次精度コードをカプセル模型周りの乱流流れ場に適用する. HIESTカプセル型有人宇宙械模型周りの実験データ及びRANS結果との比較検討を行う. HIESTは世界最大の衝撃風洞であり, 他の衝撃風洞では不可能な高エンタルピ条件下の自然乱流遷移を捕らえることに成功している. このような実機に近い高エンタルピ高Re数条件下の自然乱流遷移による加熱率データは世界にも例がなく, 有人宇宙機の高精度熱空力予測に向けて, HIEST加熱率データと詳細な乱流解析によるCFD結果との比較検証が望まれる. 特にRANSが苦手とするカプセル模型後方の剥離領域部分について壁面加熱率および空力係数を調べる. 並行して極超音速乱流流れ場における熱化学モデルの検討およびLES計算に用いるSGSモデルの検討を行う. 研究当初はこれらのモデルの不確かさを排除するために, 理想気体計算およびSGSモデルを用いない陰的LESによる解析を行うが, モデル検討の知見が得られた場合はこれらを随時反映していく. その後, LES解析で得られた知見を活かした新たなRANSモデル構築も視野に入れる.
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