2013 Fiscal Year Annual Research Report
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13J04489
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
岩岡 秀明 九州大学, 工学研究院, 特別研究員(DC2)
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Keywords | HPT加工 / パラジウム / 水素透過 / 粒界拡散 |
Research Abstract |
本研究ではHPT (High-Pressure Torsion)加工によって結晶粒を微細化した金属材料に対して水素透過実験を行い、結晶粒界中の水素挙動について調査した。透過試験は気体水素を試料表面に流すガス透過試験と水の電気分解により試料表面に水素を発生させる電気化学的透過試験の二種類を行った。試料は水素に対する表面特性に優れたパラジウムを選択し、格子欠陥の少ない焼鈍材、転位を多く含んだ圧延材、転位とともに結晶粒界を多く含んだHPT材の三種類の材料を用意した。 ガス透過試験は焼鈍材とHPT材に対して100℃~500℃の温度範囲で行ったが、高温側ではHPT材の結晶粒の粗大化が、低温側では水素化物の生成が起きてしまい、焼鈍材とHPT材の比較ができるのは150℃付近に限られた。しかし、この温度における水素透過速度はHPT材中の方が大きくなり、結晶粒界が高速拡散経路となっていることが分かった。 一方、電気化学的透過試験は低温でも水素化物の生成が起きないように水素を発生させる電流量を調整して行い、そこから求まる水素の拡散係数をアレニウスプロットの形でまとめた。また、HPT材では結晶粒界だけでなく転位も高密度に導入されているので、結晶粒界の働きをより明確にするため、HPT材と焼鈍材だけでなく、転位を多量に含んだ圧延材も比較対象とした。この透過試験より得られた水素の拡散係数は圧延材が最も小さく、その活性化エネルギーも高くなった。これは従来報告があるように転位が水素のトラップサイトとして働いたためである。一方、HPT材では圧延材と同程度の転位密度を有しているにも関わらず、水素の拡散係数は焼鈍材よりも大きくなり、活性化エネルギーも低くなった。このことからHPT材に多量に導入された結晶粒界で水素の拡散が促進されていることが分かった。これはガス透過試験の結果とも一致する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は計画通りパラジウムを用いた調査を終えた。HPT加工を行った試料中の転位や結晶粒界などの格子欠陥を定量的に評価し、透過実験から得られた拡散係数の結果と比較することで、結晶粒界で水素の拡散が促進されることを確認することができた。今後、金属の種類を変えても、同様の手法で実験を行っていくことができると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は面心立方構造を持つパラジウムを用いて調査を行った。結晶粒界中の水素挙動については結晶構造によって異なるとする報告もあるが、同一著者によってその違いを検討した例は少ない。そこで今後はパラジウムと結晶構造の異なるバナジウムなどの金属に対しても同様の測定を行い、結果を比較していく。 また固溶原子が存在する場合の影響を調査するため、パラジウムに銀を添加した合金に対しても調査を行う。この合金は高純度水素を精製する水素透過膜に用いられており、高い水素透過能が求められる。高純度パラジウムと同様に多量の結晶粒界によって水素を素早く透過させることが出来れば実用的な面でも有意義なものとなる。
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Research Products
(2 results)