Research Abstract |
山口(報告者)の研究の大きな目的は, 中高生および大学生が, 課題に適切な学習方略を選択して使用できるように, そのメカニズムの解明や介入方法の提案をすることである。平成25年度は, 学習方略の使用を促進・定着させる規定要因の解明, 見いだされた要因への介入およびその効果検証, の2点について検討した。 本年度の研究では, 使用することが効果的であるという"有効性の認知"と使用するのは面倒であるという"コスト感"について, 方略使用に対するメタ認知的な知識の中の条件知識の一部として捉え, "どのようなときに"効果的だと思うのか, 面倒だと思うのかを調査してきた。有効性の認知については, 次のテスト/生涯という条件と常に使い続ける/適切な場面で使うという条件の2×2条件の組み合わせから検討し, 次のテストに向けて常に使い続けることが効果的だと思っているほどよく使用していることが明確になった。コスト感にっいては, "面倒である"という表現を変え, いくつかに細分化した結果, 使用される方略の質によって影響が変化する可能性が示された。これにより教育実践への知見として, 先行研究の多くは動機づけに働きかけるような, 学習者が興味関心を向けるような授業をする, という物であったが, 効果的な学習方略の使用を指導する重要性と効果の可能性を示している。 上述の結果の要因を操作し効果を検証することが必要である。しかし, 先行研究の多くが示してきた動機づけを操作する実験も行う必要があると考える。そのため, ある動機づけに方向付けることで使用する方略や記億成績が異なるか検討した。まず, もともと持っている動機づけの影響としては, 使用する方略の頻度と関係性はみられなかったが, 他者より優りたいという動機づけが強いひとほど記憶成績が良かった。また, 他者より優りたいという動機づけに方向付けた場合は, 記憶成績ではなくある方略の使用頻度が向上した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究そのものの進捗状況としては, 新たに二つの実験と七つの調査をするなど, 当初の計画以上に進展していると考えている。また, それに伴い新たな研究課題・計画が立案されている。しかしながら, それらの実験や調査について, 論文化したうえで第三者の評価を得るという過程を終えていない。そのため, 自己評価では"②"が妥当である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も学習方略の使用の規定要因を中心に調査による実態把握を行い, そこで見いだされた要因について操作する実験を行う。特に方略使用に対する認知的な要因である有効性の認知やコスト感に注目し, 使用する学習方略の選択について明らかにする。その際に, 先行研究の多くが取り上げてきた学習に対する動機づけの影響も考慮し, さらにメタ認知や記憶などの基礎的な実験の枠組みも用いて, 学習が発生するメカニズムを包括的に捉えることが目的である。
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