2014 Fiscal Year Annual Research Report
クロマチンリモデリング因子CHDの包括的な機能解析
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13J04520
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
喜多 泰之 九州大学, 医学系学府, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | クロモドメインヘリカーゼDNA 結合タンパク質 / CHD8 / 自閉症 / 肥満 / 脂肪分化 / Pparγ / C/ebpα / メタボリックシンドローム |
Outline of Annual Research Achievements |
クロモドメインヘリカーゼDNA 結合タンパク質は、ATP 依存的にクロマチンの構造変化を引き起こし、遺伝子発現を調節する。この中でCHD8 は、自閉症の主要な原因遺伝子として注目を集めており、CHD8 変異を持つ患者は痩せ型が多いことが報告されている。このことから、脂肪分化や代謝機能におけるCHD8 の重要性が示唆されるが、その具体的な機序は明らかになっていない。私の所属している研究室では、これまでに世界で初めてCHD8 の機能解析を行い、クロマチン上にリンカーヒストンH1 を呼び込むことによってp53 やβ-カテニンの機能を抑制することを発見し、これが発生期の器官形成に重要な役割を果たしていることを示してきた。本研究では、CHD8 ヘテロ欠損マウスに高脂肪食を負荷し、肥満に対す抵抗性を検討した。また、マウス脂肪組織より脂肪幹細胞を単離し、試験管内で脂肪分化を誘導することによって、CHD8が脂肪分化に与える影響を評価した。
その結果、マウス全身性にCHD8をヘテロ欠損させると、脂肪分化調節因子であるPparγとC/ebpαの発現が減少し、肥満及び耐糖能異常が抑制されることを発見した。また、間葉系幹細胞特異的にCHD8を欠損させると顕著な脂肪組織の減少を来すことから、CHD8へテロ欠損マウスの抗肥満表現型は脂肪分化異常が原因であるものと考えられた。さらに、脂肪前駆細胞細胞において、CHD8はPparγとC/ebpαのプロモーター領域へ特異的に結合し、その転写を制御しており、試験管内でCHD8を欠損させると脂肪細胞への分化が著しく抑制された。これらのことから、CHD8は脂肪分化に必須なマスタークロマチンリモデリング因子としてPparγとC/ebpαの発現を調節しており、その制御メカニズムは肥満やメタボリックシンドローム、さらには2型糖尿病の病態に深く関わっていることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
CHDファミリーの中で、CHD8に関する研究を行い、CHD8がPparγとC/ebpαを制御し脂肪分化を調節していることを突き止めた。また、CHD8ヘテロノックアウトマウス、間葉系幹細胞特異的CHD8ノックアウトマウスが、脂肪分化が抑制されることによって、肥満に対して抵抗性を持つ事を突き止めた。このように、CHD8と脂肪分化に対する機能を詳細に明らかにする事が出来ており、研究は順調に進展していると言える。ただ、本研究課題はCHDファミリーの包括的解析を目的としており、その他のCHDファミリーの解析は今後の課題である。
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Strategy for Future Research Activity |
CHD8を用いて行ってきた脂肪分化に関する一連の解析を、CHD9ノックアウトマウスを用いて実施する。 その結果を踏まえ、CHD8及びCHD9の脂肪分化に関する機能の比較を行う。
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Research Products
(2 results)