2014 Fiscal Year Annual Research Report
微細藻類‐微生物間相互作用を介した海洋有機炭素生成・分解・蓄積過程の解明
Project/Area Number |
13J04633
|
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
多田 雄哉 北海道大学, 地球環境科学研究院, 特別研究員(PD)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | 海洋植物プランクトン / 海洋細菌 / 溶存有機物 / 細菌群集構造 |
Outline of Annual Research Achievements |
外洋域で優占するとされる微細藻類5株の破砕抽出物のアミノ酸組成解析(ペプチド態および遊離態)を行った結果、ペプチド態アミノ酸では、各藻類間での組成比の違いが見られなかった一方で、遊離態アミノ酸では、各藻類に特徴的な組成比が見られた。これらの結果から、異なる微細藻類から溶出される有機物は、現場海水の遊離態アミノ酸組成比を変化させる可能性が明らかとなった。KH-13-7次白鳳丸航海で実施した微細藻類抽出物質添加培養実験で取得した試料について、微細藻類抽出物質に対する細菌群集構造の応答解析を行った。また、細菌群集構造解析はHNA (High Nucleic Acid: 細胞内核酸濃度が高い細胞)とLNA (Low Nucleic Acid: 細胞内核酸濃度が低い細胞)のそれぞれに対して行った。この結果、異なる微細藻類抽出物質の添加に対して、HNA、LNA細菌群の細菌群集構造は特徴的な変化を示すことが明らかとなった。これらの群集構造の変化に寄与した細菌系統群を特定するため、Similarity Percentage Analysisを行った。この結果、無添加コントロール区に対する細菌群集構造の変化率は、添加した抽出物質間で異なり、HNA細菌群の中ではP. calceolate抽出物質添加区で変化が最も大きく (56%)、LNA細菌群の中では、C. camella抽出物質添加区で最も変化が大きかった (53%)。また、それぞれの添加区では、Alcaligenes属 (Betaproteobacteria)およびuncultured Actinobacteria系統群がこれらの群集構造の変化に寄与していたことが明らかとなった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
外洋性微細藻類由来の溶存有機物の化学的特徴(特に遊離態アミノ酸組成比)が異なることを明らかにし、これらを添加することで外洋域の細菌群集構造が変化することを明らかにすることができた。また、次世代シーケンサーを用いた新たな解析を導入することで、外洋域における微細藻類と微生物間の相互作用を詳細に解析することができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成27年度は、これまで得られた結果をまとめ、投稿論文を執筆・投稿すると同時に、沿岸性微細藻類抽出物質に対する細菌群集構造の変化、および溶存態有機物 (アミノ酸や糖類など)との相互作用、さらには、これらの微細藻類由来の易分解性溶存有機炭素からの難分解性溶存有機炭素生成過程を解析してゆく予定である。
|
Research Products
(2 results)