2013 Fiscal Year Annual Research Report
協奏レドックス触媒で切り拓く新しい精密ラジカル重合
Project/Area Number |
13J04643
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
藤村 幸次郎 京都大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | フェロセン / リビングラジカル重合 / レドックス / 協奏 / 鉄触媒 / 機能性モノマー |
Research Abstract |
金属触媒を用いるリビングラジカル重合(Mt-LRP)は金属の一電子レドックスを伴う触媒サイクルで進行するリビングラジカル重合であり、構造の明確な高分子の合成に有用な重合ツールとして広く用いられている。Mt-LRPの実用性をさらに高めるためには「触媒効率のさらなる向上」と「極性モノマーに対する耐性向上」が必要不可欠である。本研究員はこれまでに、主触媒として用いるルテニウム錯体に対し、それ自身は触媒活性を示さないがレドックス特性を示すフェロセン(FeCp_2)を組み合わせることで、触媒の高活性化に成功した。モデル反応等による解析から、主触媒とフェロセンが"協奏"して一電子レドックスサイクルを促進することを明らかにし、『協奏レドックス触媒系』として研究を進めてきた。一方、鉄は地球に豊富に存在する安価な金属であり、Mt-LRPでも鉄触媒の活性向上が望まれているが、特に高極性モノマーに対する触媒活性が低いという課題があった。 そこで本年度は本協奏系を、鉄錯体を主触媒とする重合系に展開することで、『"オール鉄"協奏レドックス触媒系』の開発を検討した。当初、二臭化鉄(FeBr_2)とアンモニウム塩(n-Bu_4NBr)から成る触媒系に対し、フェロセン(FeCp_2)の添加を試みたが、効果は現れなかった。しかし、ルテニウム触媒も含め、主触媒とフェロセン助触媒の酸仁還元電位の関係が触媒活性に与える影響を調べた結果、この鉄触媒系にはFeCp_2よりも酸化還元電位が低いデカメチルフェロセン(FeCp^*_2)が適しているという知見を得て、実際にこの組み合わせで高活性なオール鉄触媒系を実現した。 従来の鉄触媒は、極性基によって不可逆的に配位子脱離してしまう点が問題であったが、このオール鉄触媒系はボスフィンやアミンなどの配位子を用いなくても活性が高い。そのため、極性モノマーに対しても触媒活性を示す。例えば従来の鉄触媒系では制御が困難であった水酸基やカルボン酸を含むモノマーに対して、触媒活性の向上が確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
金属触媒リビングラジカル重合の大きな課題の1つであり、本申請研究においても重要視していた高活性鉄触媒系の開発を初年度で達成した点は非常に大きな進展である。さらに、鉄触媒系開発において見出された酸化還元電位に基づく協奏レドックス触媒の設計指針は、今後さらなる高活性協奏触媒系の開発を行う上で非常に重要となる。以上の観点から、「当初の計画以上に進展している。」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、まずフェロセン(FeCp_2)のシクロペンタジエニル環に種々の置換基が導入されたフェロセン誘導体を開発し、その酸化還元電位を測定する。その後、種々のLRP鉄触媒に対し、酸化還元電位に基づいて適切な助触媒を選択し、高活性鉄触媒系を多数開発する。さらにそれらを、酢酸ビニルを含む種々の非共役モノマーの重合へと展開し、高汎用性鉄触媒の開発を達成する。また、フェロセンに導入する置換基を適切に設計することで、重合後に容易に除去できるフェロセン助触媒を開発し、工業的実用化を見据えた協奏レドックス触媒系へと展開する。例えば、フェロセンにラジカル重合性部位を導入し、スチレン誘導体等との共重合によってフェロセン含有ポリマーゲルを開発し、重合後の容易なフェロセンの除去を可能にする。
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Research Products
(5 results)