2014 Fiscal Year Annual Research Report
物理化学的解析を基盤とした抗P-cadherin抗体の内在化機構の解明と分子設計
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13J04678
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
工藤 翔太 東京大学, 工学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 抗体 / 内在化 / P-cadherin / 物理化学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、抗体医薬を用いた癌治療戦略に影響を与える「抗体の内在化現象」に注目し、物理化学的手法に基づき抗体の内在化を制御する抗体の物性、機能の解明を行う。研究モデルとして、膵臓癌や肺癌で大量発現する蛋白質「P-cadherin」と4種の抗P-cadherin抗体を用いる。当該年度においては、抗体の内在化効率を調べる上で重要な基礎となる以下の3つの項目を行った。 1. P-cadherinの接着メカニズムの解析:各種P-cadherin変異体のX線結晶構造解析、dimer形成反応の熱力学的解析、速度論的解析を行うことで、P-cadherinはEn-X、Tr-X、ss-X-dimerと複数の中間体構造を経ることで、熱力学的に最も安定なss-dimer形成を迅速に達成していることが明らかになった。細胞レベルにおいても、X-dimer形成が素早い細胞接着形成において重要であることが分かった。 2. 抗体による免疫染色:複数のP-cadherin抗体を用いて染色を行った。抗体の局在から、P-cadherinの接着を阻害する抗体やP-cadherinの接着には影響を与えず細胞間に局在する抗体などが観察された。 3. 抗体のエピトープマッピング:P-cadherinの接着を阻害する抗体と阻害しない抗体の違いを解明するためにエピトープの特定を行った。阻害する抗体と阻害しない抗体は共にP-cadherinの接着活性ドメインであるEC1に結合した。しかし、アミノ酸レベルでのエピトープマッピングを行うと、両抗体はEC1内の別々の部位に結合することが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
抗体の内在化現象を解き明かすためには、ターゲット分子の理解、抗体と細胞の相互作用解析の手法の確立が重要となる。当該年度は、研究実績概要で示したように、ターゲットの機能を分子レベル、細胞レベルで明らかにし、さらに、複数の抗体がP-cadherinの機能に与える影響に関しても、免疫染色法や細胞凝集観察により明らかにした。また、機能の違いが抗体の結合するエピトープの違いによることも明らかにした。内在化する抗体とP-cadherinの接着機能の阻害の間に相関が観られていることからも、概ね順調に研究は進んでいると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度は、P-cadherinの機能阻害と抗体の内在化の関係に関して詳細に解析を進める予定である。具体的な研究予定は以下の通りである。 1. 接着阻害のメカニズムに関する解析 (P-cadherinの中間体X-dimerに対して抗体の結合が与える影響の解析) 2. 内在化機構の解明 (エンドサイトーシス阻害による影響) 3. 内在化抗体の局在の解明 (エンドソームと抗体の共染色)
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Research Products
(2 results)