2014 Fiscal Year Annual Research Report
強磁性金属超薄膜における磁性の電界制御とその起源解明
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13J04681
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
河口 真志 京都大学, 化学研究所, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | スピントロニクス / 磁性 / 界面 / 電界効果 / 薄膜 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、強磁性金属超薄膜における電界効果についてその起源の解明を目指す。その目的を達成するための方法として、表面や界面において自発的に生じた電界によって誘起されると考えられているラシュバ効果に焦点を当ててきた。本年度においては、前年度に確立した、ラシュバ効果によってもたらされると考えられる電流誘起の有効磁場の検出方法を用いて研究を行った。より具体的には、電界効果と有効磁場の関係、有効磁場の起源について、確立した検出方法の信頼性、の三点に焦点を当てて実験・研究を行った。 電界効果と有効磁場の関係については、強磁性金属多層膜に電界を印加し、電流に誘起される有効磁場の大きさとの関係を探った。その結果、印加電界に対して有意な大きさの変化をみることはできなかった。この結果は有効磁場とラシュバ効果の関係に否定的な結果である。 この結果を受けて、有効磁場そのものについて調査を行った。強磁性層の膜厚を変化させながら有効磁場の大きさを測定し、膜厚と有効磁場の間の関係を調べた。その結果、有効磁場の膜厚依存性はラシュバ効果ではなく、スピンホール効果によって有効磁場が引き起こされていると考えた場合の振る舞いを示した。しかしながら、有効磁場の面内成分に関してはスピンホール効果では説明できない寄与があることもわかった。この成果は有効磁場の起源を解明する上で重要であると考えられる。 最後に、それらの研究に用いた測定手法の妥当性について調査した。有効磁場は電圧の測定から間接的に決定されるために、他の起電力の寄与に注意しなければならない。特に磁化と熱による起電力が問題となるが、これは外部磁場強度に対する依存性を注意深く調べることでその寄与を分離することができることがわかった。この成果は有効磁場の測定をより正確に行うことを可能にした点でこれからの研究に貢献すると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度は電界効果と電流誘起の有効磁場の関係に焦点を当てた。その結果として、事前に予想された結果に否定的な結果が示されたことから、有効磁場そのものに焦点を当てた研究を行った。その成果として有効磁場についての新たな知見が得られた。このことは電流に誘起される有効磁場についての起源解明に貢献すると考えられる。またその過程で有効磁場の測定に関する問題である電流から発生する熱による問題に一定の解決策を示すことができた。この成果は今後のスピントロニクス分野における研究の進展に貢献するものと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度においてはイオン液体を用いると固体絶縁層より大きい強度の電界を印加できることを利用して、有効磁場と電界効果の関係を探る。それと同時に、ラシュバ効果以外の側面において強磁性多層膜における電界効果の起源を探る。具体的には、界面で発生する磁気異方性が電界効果で変調されるという結果に関連して、磁気異方性に関係していると考えられる界面における電子の軌道角運動量が電界効果で変調され得るかを強磁性共鳴などの実験手法を通じて調査する。
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Research Products
(6 results)