2013 Fiscal Year Annual Research Report
高温超伝導コイルを利用した磁気セイル宇宙機に関する研究
Project/Area Number |
13J04712
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
長崎 陽 京都大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 磁気セイル / 高温超伝導コイル / 遮蔽電流 / 最適設計 |
Research Abstract |
本研究は、次世代宇宙推進システムである磁気セイルに搭載する高温超伝導コイルシステムの研究開発を目的としている。現在、同コイルの最適設計に向けた基礎検討として、高温超伝導コイルの電磁的熱的諸特性の解析コードを構築している。本年は、磁気セイル高温超伝導コイルシステムの電源系に軽量かつ低消費電力なDC-DCコンバータを適用することを想定し、DC-DCコンバータの出力変動(リプル)によって高温超伝導コイル内に誘導される遮蔽電流について調査を行った。すなわち、これまで構築した高温超伝導コイルの解析コードを発展させ、遮蔽電流が磁気セイル用コイルの磁場・熱安定性に与える影響について検討を行った。非線形な超伝導抵抗は遮蔽電流自身および自己磁場に依存するため、超伝導線材内の電流密度分布の算出は自己無撞着に解き進める必要がある。シミュレーションにおいては、京都大学生存圏研究所のKDKシステムを用いて、コイルターンごとにMPIで領域分割したシミュレーションコードを開発し高速な並列計算を行った。本研究室のビスマス系超伝導コイルにおける実験結果と解析結果の比較を行うことで、コイル内遮蔽電流のモデル化および減衰特性について検討した。その結果、ループ長の小さい遮蔽電流を仮定することによって、実験より得られた遮蔽電流の減衰特性を解析において定量的に再現することに成功した。また、遮蔽電流磁場のヒステリシス特性についても実験・解析で一致することを確認し、コイル磁場に対する遮蔽電流磁場の割合は約1-2%と比較的小さいことを明らかにした。さらに、遮蔽電流によって発生する損失がコイルの熱安定性に与える影響について解析を行った。その結果、通電電流の交流成分の振幅が大きくなるに従って、コイル温度が急速に上昇(常伝導転移)することを明らかにした。今後、開発した解析コードを用いて磁気セイル用高温超伝導コイルの最適設計を行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は高温超伝導コイルの遮蔽電流を解析するコードを開発し、コイルの磁場および熱安定性に与える影響について国際学術誌へ2報の論文を投稿しており、研究は順調に進展している。また、本コードの開発によって、磁気セイルの高推力化という課題解決に向けて今後より詳細な高温超伝導コイルの設計を行うことが可能となった。当初予定した冷却系の設計については、コイル設計によって磁気セイルの既存推進システムに対する優位性を明らかにした後に行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究成果から得られた推力では、磁気セイルの既存推進システムに対する優位性か十分には明らかになっていない。今後は、これまでに開発した高温超伝導コイルの解析コードおよび遺伝的アルゴリズムを用いて、磁気セイルの高推力化を目的とした高温超伝導コイルの最適設計を行う。また、更なる磁気セイルの高推力化のために、宇宙空間でコイルを展開する展開式コイルの実現可能性について数値モデルおよび実験において検討を行う。
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Research Products
(7 results)