2013 Fiscal Year Annual Research Report
非平衡状態に対する遷移線形化の手法による非線形応答理論
Project/Area Number |
13J04728
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
小川 駿 京都大学, 情報学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | Vlasov方程式 / Euler方程式 / 臨界現象 / 非線形応答理論 / 非平衡統計力学 / 大自由度力学系 |
Research Abstract |
ヴラソフ方程式の定常分布関数に対し摂動を付け加えた場合の非線形ダイナミクスと, 外場をかけた際の非線形応答の長時間後の挙動を求めた, その際に, 素朴な高次摂動は用いず, 遷移線形化というプラズマ振動の解析に用いられた方法を統計力学の問題に応用した, 遷移線形化とは初期の定常解周りで摂動展開せず, まず, 無限時間後の終状態を仮定し, ヴラソフ方程式をその終状態の周りで展開し, 形式に解いた後, 終状態を自己無撞着に求める方法である. この結果, 上記の線形応答理論が適用できない外場が大きい場合の応答や臨界点直上の応答を求めることができた. この結果を論文にまとめ投稿した. ハミルトニアン平均場モデルにおける線形応答理論により, 孤立感受率を解析的に求めることができるようになった. 特に秩序相においては孤立感受率の臨界点における発散を特徴付ける臨界指数γと統計力学から予測されるそれの値が異なることが分かった. その臨界現象の差異の原因がヴラソフ方程式が持つ無限個のカシミヤ不変量によるものだということを明らかにした. さらに同様の議論がハミルトニアン平均場モデルのみでなく, サイト間の相互作用が均等でない場合にも成立することも示し, 論文として発表した. 上記の遷移線形化の手法により, 臨界点直上の外場への非線形応答も求められる様になり, 秩序変数と外場の臨界点直上での関係を特徴付ける臨界指数δも求められた. こうして求められたγとδは, 統計力学から求められる値とは異なるが, 統計力学で示されるスケーリング関係式が満たされることも示した. 二次元流体におけるパターン形成は惑星表面の大気の流れや, 海流に見られる. この様な二次元流体の渦度場のパターン形成の機構を理論的に解明するために, 二次元トーラス上の理想流体におけるパターン形成を研究した. プラズマ物理におけるトラシピング効果とランダウ減衰の関係, さらに複数の振動解の非線形重ね合わせ近似の成立条件を勘案することにより理論的に予測した。ここで得られた結果は先行研究の数値計算による観測で得らた結果と質的に同等であった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ヴラソフ方程式における遷移線形化の手法を用いた非線形応答理論の研究は順調に進展した. この結果を元に, 大自由度力学系における臨界現象に関する新たな知見を得ることもできた.
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Strategy for Future Research Activity |
ヴラソフ方程式系における遷移線形化の手法を用いた非線形応答理論においては, 外場に対する応答を求めることはできたが, 臨界点から離れたところでは数値計算結果と理論の結果に差異が見られた. これはランダウ減衰の効果を正しく取り込めていないからだと考えられるので, ランダウ減衰の効果を取り込んだ理論的な解析を行う. 二次元流体におけるパターン形成においては線形化方程式を元にした解析で, 質的には数値計算と同等の理論予測ができたものの, 振動数のシフトの問題が未解決のまま残っている. 今年度は遷移形化など非線形効果を取り入れた手法で, この問題に取組む.
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Research Products
(6 results)