2013 Fiscal Year Annual Research Report
電極電位や光によって誘起される溶液内化学過程の理論的研究
Project/Area Number |
13J04732
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Research Institution | Institute for Molecular Science |
Principal Investigator |
飯田 健二 分子科学研究所, 理論・計算分子科学研究領域, 助教
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Keywords | 電位 / 光化学過程 / SERS / 電気化学過程 / 電極 / 有限密度汎関数理論 / 量子開放系クラスターモデル / 連続誘電体理論 |
Research Abstract |
当年度は先ず電気化学過程を量子化学に基づき記述する為の理論的手法の開発を行った。所属研究室にて開発された量子開放系クラスターモデルを有限温度に拡張し、更に溶媒和を連続誘電体モデルにて取り込んだ。これにより、電極・吸着種・溶媒からなる系について電極の半無限性を踏まえた上で電位一定下での化学過程を記述する事が可能である。開発した手法を用いて金電極及び銀電極への銀イオンの吸着について検討した。その結果、電位一定では金電極へより吸着し易いというアンダーポテンシャルデポジションの実験と一致した結果が得られた。更なる解析から銀電極より金電極に吸着しやすい原因は、同じ電位では金電極の方がより負に帯電している為に銀イオンとより強く静電的に相互作用するからであるという事が明らかとなった。以上の成果は国内学会及び国際誌(J. Chem. Phys)にて発表済みである。 次に電気化学環境における光学応答現象の検討に着手した。実時間DFT法を有限温度へ拡張し、更に連続誘電体理論を用いる事で光学応答現象の電位依存性を検討出来る手法を開発した。これを4-mercaptopyridineの銀電極表面におけるSERSへと適用した。その結果電位の変化に伴い、その強度が大きく変化するという実験結果を再現する事に成功した。次に時間依存誘起電子密度に着目した所、電位変化に伴いその分布が大きく変化している事が明らかとなった。これに着目し、振動モード間の相違の由来について検討をした結果、振動モードと誘起電子密度の幾何学的対応関係から解釈できる事が明らかとなった。この成果は国内学会にて発表済みである。 以上、電気化学環境での吸着現象並びに光学応答現象について電位依存性の解明を行った。これらの研究にて開発された手法並びに知見は、光や電極が関わる現象の分子論に基づく理解に貢献するという点で極めて意義深いといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
(抄録なし)
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Research Products
(4 results)