2013 Fiscal Year Annual Research Report
水素結合ネットワークをもつ有機結晶の光異性化ダイナミクス
Project/Area Number |
13J04747
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
古川 一輝 九州大学, 理学研究院, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 結晶 / 結晶多形 / マトリックス / 蛍光分光 / 電子スペクトル / 分子配列 / 水素結合ネットワーク / 分子間相互作用 |
Research Abstract |
分子機能の発現には分子間相互作用と反応素過程の連動が重要である. 分子機能の解明には実験だけでなく理論的にアプローチできる分子集団の研究が必要であり, 有機結晶はこのような研究対象として適している. 分子間水素結合をもつ結晶の多くは水素結合ネットワークを形成している. 水素結合による分子配列の制御が注目されてきたが, ネットワーク形成とダイナミクスの関連性については殆ど解明されていない. 本研究の意義は, 水素結合ネットワークにおける分子構造や異性化ダイナミクスの研究を行い, 単分子では見られないネットワークにおける反応ポテンシャルの解明である. まず, 結晶における分子の電子状態や光異性ダイナミクスを微視的に理解する上で, 分子間相互作用の定量的な評価が必要である. 分子性結晶における分子間相互作用は, 基底および励起状態における分子の電気双極子モーメントおよび分子分極率に左右される. そこで, 電場変調分光測定と量子化学計算を併用して, 分子の電気双極子モーメントおよび分子分極率の調査を行った. また, 同一分子でありながら, 分子配列の異なる結晶多形が異なる蛍光を示すことが知られていることから, 分子配列の違いが分子の電子状態やダイナミクスにどのような影響を及ぼすかについて研究するための分子系として有用である. そこで, 結晶多形による発光特性の違いについて調査する. また, 周囲の分子配列の違いに応じてどのように分子間相互作用が変化するのかを調査するために, 固相-固相相転移を生じるアセトニトリル中に分子をドープして蛍光スペクトル測定を行った. 相転移に伴う周囲の分子配列の変化に応じて, 分子の電子状態がどうように影響を受けるのか調査した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
電場変調分光測定では, 測定データの再現性を確かめるため, 再測定を行う必要が生じた. また, 極低温におけるレーザー分光測定も予定していたが, 装置の故障が原因で測定を行うことが出来なかった, 以上のような理由から, 研究がやや遅れている.
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Strategy for Future Research Activity |
電場変調分光測定については, 来年度4月中に再実験を行い, 電気双極子モーメントや分子分極率の決定を行う. また, レーザーについては, 昨年度末に修理が完了したため, 研究計画に沿って実験を行う予定である.
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Research Products
(3 results)