2013 Fiscal Year Annual Research Report
第二次世界大戦後のシンガポールおよび香港における文化活動と「戦争の記憶」
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13J04793
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Research Institution | Tokyo National University of Fine Arts and Music |
Principal Investigator |
松岡 昌和 東京藝術大学, 大学院音楽研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 第二次世界大戦 / シンガポール / 香港 / 文化政策 / プロパガンダ / 植民地 / 記憶 |
Research Abstract |
本研究は、戦時中から戦後にかけてシンガポールおよび香港で活動した「文化人」のネットワークを見ることよって、戦時期から戦後にかけての文化活動の連続と断絶、「戦争の記憶」の創造・継承・忘却のあり方を浮き彫りにするものである。 本年度はまず、戦時期にフォーカスを当て、日本占領下シンガポールにおける文化活動の諸側面並びに現地に赴いた従軍文化人たちの背景を取り上げて研究発表を行った。漫画家については、倉金良行や吉野弓亮といった個人の活動を現地新聞に掲載された作品や他のジャンルの刊行物などを用いて戦前期から戦後にかけての連続性を視野に入れながら検討したほか、従軍漫画家たちの活動について描写対象や現地認識などについて比較検討も行った。また、音楽や演劇など娯楽の諸ジャンルについて、現地側の認識も含め、その実態を明らかにする研究発表も行った。音楽については、戦前・戦後との連続性を指摘し、演劇に関しては、日本の昔話を現地風にアレンジするといったスタイルがしばしば用いられていたことを明らかにした。映画については、本年度は日本内地での南方映画工作をめぐる議論について整理するにとどまっている。占領地における映画興行の実態の把握については次年度以降の資料調査を踏まえ、整理・分析していく計画である。 研究発表と並行し、新たな資料の収集も行った。シンガポールにおいては、これまで主要資料として用いてきた英字紙のほか、華字紙についても調査を進め、英字紙が伝える内容とは異なった文化活動の諸相が明らかになった。イギリスにおいては、戦争省資料を閲覧し、日本軍のプロパガンダに関するイギリスの調査内容について今後整理・分析を進めていく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
資料収集については、研究計画立案前の事前調査と実際の所蔵状況が異なっていたケースもあったが、本年度明らかにすべき歴史的事実について概ね把握することができた。研究成果については、国内外での研究発表を通して多くの研究者と研究課題について議論ができたものの、学術論文の掲戟には至らず、今後議論を精緻なものとし、学術論文としてまとめ直すことが望まれる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度に収集した資料の整理・分析を進め、その成果を広く発表していく。それとともに、本研究課題2年目以降の研究内容となっている、戦時期と戦後の文化活動の連続性と非連続性に関する資料を国内外で収集する。具体的には香港に関する資料を優先的に収集することを計画している。
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Research Products
(8 results)