2013 Fiscal Year Annual Research Report
フェムト秒レーザーを用いた固体表面からの光誘起原子脱離過程の解明
Project/Area Number |
13J04829
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
宮坂 泰弘 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | フェムト秒レーザー / アブレーション / 金属 |
Research Abstract |
フェムト秒レーザーと金属の相互作用では、様々な実験報告から非熱的な現象が生じていると考えられており、我々は極低フルーエンスレーザー照射により飛散したイオンを観測することで物理的機構を考察してきた。今までの結果から、極低フルーエンスレーザー照射により飛散するイオンの量はレーザーの偏光に依存することが明らかになっており、イオン放出とアブレーションには深い関わりが考えられるため、アブレーション率のフルーエンス依存性を異なる入射角度、偏光において測定を行った。結果、アブレーション率はS偏光照射では入射角度が大きくなるにつれて減少し、垂直入射と比較して70°入射では2桁も小さくなることが明らかになった。一方P偏光照射ではさほど変化しないことが明らかになった。この結果は飛散イオン量の測定結果とよく一致している。従来の理論では光の進入長によってアプレーション率が説明されていたが、本結果は従来理論を覆す可能性を秘めており、ナノ粒子のイオン化やアブレーションの物理機構解明に大きな手がかりとなる。また、我々が提案している非熱的イオン放出機構では、ナノ粒子の粒径分布によってエネルギースペクトルが決まるため、粒径分布を制御したターゲットにレーザーを照射することで飛散イオンのエネルギースペクトルを制御することが出来る可能性がある。ナノ粒子表面からのイオン放出機構を確認するために、レーザー誘起前方転写法により粒径が揃った金属ナノ粒子付加基板の作成を試みた。室温、湿度の制御された実験室において、引き上げ法により粒径0.5㎛のポリスチレン粒子をガラス基板上に単層塗布する事に成功した。しかし、粒径0.5㎛のポリスチレン粒子単層膜では粒子間の隙間が小さいためにガラス基板にPtがほとんど届かず、十分に蒸着されないことが明らかになった。今後、粒子間の間隔を広くするために粒径1μmに変更して金属ナノ粒子付加基板作成を試みる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
イオン化とアプレーションの関係に着目し、アブレーション率の入射角度と偏光の依存性を得ることに成功した。本結果はナノ粒子のイオン化機構を考察する上で重要な知見となる。また、粒径0.5㎛のポリスチレンナノ粒子の単層膜生成には成功したが、Pt蒸着が施せないことが明らかになったため、粒径1㎛に変更して再度引き上げ法を行う。
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Strategy for Future Research Activity |
アブレーション率の入射角度と偏光依存性を測定することで、アブレーション率に関する従来理論での説明が妥当ではない可能性と、今までに発見されていない光の侵入に関する現象が存在する可能性が明らかになった。現在ターゲットには銅を用いているが、プラチナを用いることで酸化の影響の有無を確かめる。また。プラチナは特別な処理無く容易に電子顕微鏡観察が行えるため、表面形状変化とアブレーションの関係についても考察を行う。また、粒径1㎛のポリスチレン粒子を用いた金属ナノ粒子付加基板作成を試みて、飛散イオンのエネルギー制御実験を目指す。
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Research Products
(4 results)