2013 Fiscal Year Annual Research Report
データ駆動科学に向けたマルコフ連鎖モンテカルロ法緩和過程の解明とその応用
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13J04920
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
中西 義典 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 情報統計力学 / ベイズ推定 / 分布推定 / ハイパーパラメータ / マルコフ確率場モデル / 拡散方程式 |
Research Abstract |
本研究の目的は, 自然科学で得られる多種多様なデータから原理・法則を抽出するデータ駆動科学を推進することである. 中でも, マルコフ連鎖モンテカルロ(MCMC)法のような統計物理学をその起源とする手法に着目している. 採用第1年度目である平成25年度では, 研究実施計画によれば, データ駆動科学における基礎的な研究を行うことになっており, 実際にマルコフ確率場(MRF)モデルのハイパーパラメータ分布推定を行った. MRFモデルは, 情報科学において画像修復をする際, 頻繁に用いられている基礎的なモデルである. 自然科学の分野でも生命科学から天文学に至る幅広い分野で画像データが得られる状況を鑑みれば, MRFモデルを詳しく調べることは非常に意義深い. 情報科学の分野ではハイパーパラメータを適切に調節することにより飛躍的に修復性能が向上することはよく知られている. 本研究では, MRFモデルと拡散方程式との対応をとることにより, ハイパーパラメータが拡散係数として解釈できることを明らかにした. 画像修復の調整パラメータというだけでなく, 物理的にも重要なパラメータであるということからも, 信頼度を含めて推定する分布推定が重要である. MRFモデルは確率モデルであるため, ベイズ推定を用いることより, 自然に事後分布が導入されることは強みである. ベイズ推定の枠組みは, 統計物理学におけるボルツマン分布の考え方と親和性が高いことも注目に値する. ハイパーパラメータ推定を行うには, 系が階層的であり多重積分を伴うことが難点であるが, 解析計算可能なモデルを用いることによりその難点を克服した. また, 点推定では近似精度の高い変分ベイズ法が, 分布推定では機能しないことを明らかにした. このことから, 解析計算ができない複雑なモデルを用いる場合, 分布を近似することなく再現するMCMC法が役立つことが期待できる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
自然科学に頻出する画像データの解析および拡散現象に基づくパラメータ推定はデータ駆動科学を推進するための重要な進展である. また, 信頼度を含めた推定には統計物理学との数理的親和性の高いベイズ推定が役立っている. 以上の結果を英文査読有り論文としてまとめられたことが理由である.
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Strategy for Future Research Activity |
実際にデータ駆動科学を推進するとなると, 与えられた評価関数・モデルを最適化するのみならず, データから評価関数・モデルを仮説として導出することも必要である. 近年, それを達成する手法として圧縮センシングが注目を浴びている. 圧縮センシングの性能解析には統計物理学の解析手法として知られていたレプリカ法が有用である. 今後は圧縮センシングに基づく高速近似アルゴリズムとマルコフ連鎖モンテカルロ法に基づく全探索アルゴリズムとの対応をとりつつ研究を進める.
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Research Products
(5 results)