2014 Fiscal Year Annual Research Report
マキャベリアニズムが社会的不適応を引き起こすメカニズムの検討
Project/Area Number |
13J04958
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
中村 敏健 東京大学, 総合文化研究科, 特別研究員(DC1)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | マキャベリアニズム / 抑うつ / 怒り / 偏相関分析 / 縦断質問紙調査 / 交差遅延効果モデル |
Outline of Annual Research Achievements |
Christie & Geis(1970)は、対人関係における他者操作的な側面の個人差を記述するために、マキャベリアニズムというパーソナリティ概念を導入した。マキャベリアニズムの高い個人は、自己の目的のために他者を操作し社会的な成功を収めやすいように一見思えるが、実際は社会的に適応していなくメンタルヘルスに問題を抱える可能性がこれまでの申請者の研究で示されてきた。しかし申請者のこれまでの研究だけでは「マキャベリアニズムと抑うつの関連が怒りによる偽相関の可能性がある」、「マキャベリアニズムと抑うつの間の因果関係が明確でない」という2点の問題点が解決されていないために、今年度はこれらの問題点を解決するための研究を行なった。 怒りは抑うつとの併存性が指摘されている外在性問題傾向であり、マキャベリアニズムとも関連する可能性がある。そこで怒りを制御変数にした偏相関分析を行なったところ、怒りの効果を制御してもマキャベリアニズムと抑うつの間には有意な相関が見られた。この結果からマキャベリアニズムと抑うつの関連は怒りを媒介した偽相関ではないことが示された(研究1)。 次に交差遅延効果モデル(高比良他,2006)を用いた分析によりマキャベリアニズムと抑うつの間の因果関係を検討するために縦断質問紙調査を行った。しかし実際に調査を行なったところ、第1時点では見られたマキャベリアニズムと抑うつの間の有意な相関が第2時点では見られず、交差遅延効果モデルを用いた分析を行なうことができなかった。この結果から測定の信頼性が十分ではない可能性が考えられる。そのため今後はより信頼性の高い測定方法を用いて追試を行なっていく必要がある(研究2)。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究1においてはマキャベリアニズムと抑うつの関連は他の変数を介した偽相関ではないことを示すことができた。また研究2では当初予定した交差遅延効果モデルを用いた検討を行なうことができなかったが、変数間の関連を複数回確認することができる縦断質問紙調査を行なったことで、測定方法の信頼性が低いことを発見することができた。これらの知見を基に今後、より精確なモデルを作成し、より頑健性の高い知見を提供することができると考える。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後はマキャベリアニズムと抑うつの関連について、より信頼性の高い測定方法を用いて追試を行なっていく必要がある。具体的には高橋・繁桝(2008)の方法論に従い、マキャベリアニズム尺度に加えてサイコパシー傾向尺度やセルフモニタリング尺度といったマキャベリアニズムと類似の概念を測定している複数の尺度を組み合わせた測定を行う計画である。 これによりマキャベリアニズムと抑うつの関連について信頼性の高い測定方法を確立した後には、これまでの大学生を対象とした研究ではなく、Web調査による一般サンプルを対象とした研究を行なうことでより一般性の高い知見を獲得できることを目的とする。
|
Research Products
(1 results)