2013 Fiscal Year Annual Research Report
内陸断層との比較研究に基づくプレート境界断層の物質・力学的キャラクタリゼーション
Project/Area Number |
13J04960
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
大橋 聖和 千葉大学, 大学院理学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 四万十帯 / ビトリナイト反射率 / メランジュ / 摩擦実験 / スメクタイト / 動的強度弱化 / 巨大分断層 |
Research Abstract |
1. 四万十帯を対象とした付加体中の地質構造調査と被熱構造解析 本年度は, 四万十帯横断方向の統一的・網羅的な変形分布を把握するため, 四国西部の四万十帯ほぼ全域で連続的な地質横断調査を行った. その結果, 変形が著しく, 海洋プレートに由来する物質を含む計4帯のメランジュ帯を見いだした. また, 2帯のメランジュ帯からはより後期に形成されたと考えられる脆性断層帯が認められた. ビトリナイトの反射率測定から推定される最大被熱温度は約200-350℃と調査地域内で幅を持つが, 温度変化のない, もしくは変化が連続的な地域と不連続的に変化する箇所が存在し, 後者については地質調査で見いだしたメランジュ帯中の脆性断層帯の位置と一致した. 2. 沈み込み帯浅部断層の力学・水理学的特性理解のための透水・摩擦実験 粘土鉱物(スメクタイト)を含む海溝型地震断層浅部の力学・水理学的特性を決定するため, 多様な速度条件と粘土量比のもと, 粘土質断層の変形実験を行った. その結果, 粘土質断層は低速度条件下では強い摩擦強度を示す一方, これまで顕著な動的強度低下は起こさないと考えられてきた中速度領域で劇的なすべり弱化を示すことが判った. 周囲の岩石の浸透率を変えた検証実験や間欠的な変形実験, 透水率測定などから, すべり弱化の要因は断層の透水率の低さと間隙圧の上昇プロセスであることが明らかとなった. 結果は論文としてまとめ, 国際誌に投稿した. 3. IODP第338次航海で得られた断層試料の構造解析 過去の付加体中に記録されている断層と現世の地震発生帯浅部の断層を比較するため, IODP第338次研究航海で採取された断層試料の構造解析を行った. 本年度は試料の研磨片作成と肉眼観察が終了した. 来年度以降, 薄片作成と顕微鏡分析, 機器分析を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
四万十帯での広域地質調査は当初の予定よりも順調に進んでおり, 来年度予定していた調査もほぼ完了している. また, 沈み込み帯浅部物質の力学・水理学的特性の理解については, 計画していた段階にまで至っている. 一方で, 断層帯・メランジュ帯に焦点を絞った個別調査と, IODP第338次航海で得られた試料の解析は当初の予定よりもやや遅れている. 総合すると, 全体の進展度合いとしては「おおむね順調に進展している」状況である.
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Strategy for Future Research Activity |
今年度までに明らかとなった「沈み込み帯浅部断層の力学的特性を支配する素過程」について, 天然の断層でも起こりうるのか(起こっているのか)を解明するために, 天然の断層と実験後の模擬断層の内部組織や物質を詳細に解析し, 対比を行う. また, 沈み込み帯深部での変形機構や力学的特性を明らかにするために, これまでとは異なる試験機を用いた変形実験を行う予定である. 実験は国内の既存試験機では技術的困難が生じるため, 海外の研究機関との連携(申請者の海外渡航)を予定している
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Research Products
(4 results)