2013 Fiscal Year Annual Research Report
高エネルギーリン酸結合の加水分解酵素反応における遷移状態安定化メカニズム
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13J05019
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
古池 美彦 大阪市立大学, 大学院理学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | タンパク質結晶構造解析 / 超高分解能 / 結晶相pH滴定 / 酸解離定数pKa / プロトン化状熊 |
Research Abstract |
ADPリボース二リン酸部位加水分解酵素(ADPRase)は基質であるADPリボース(ADPR)のα-リン酸を背面攻撃してプロトンを引き抜く一般塩基と、脱離する生成物のリボース-5'-リン酸(R5P)に不足したプロトンを供給する一般酸を二価金属イオンに依存して提供する。この一般酸塩基協奏過程によってADPRaseがADPR加水分解反応の遷移状態の自由エネルギーを引き下げる仕組みを科学的に解明することが本研究の目的である。そこで我々は高度好熱菌由来HB8由来ADPRaseを研究対象にして「超高分解能X線結晶構造解析によるアミノ酸残基のpH依存性微細構造研究」と「中性子線結晶構造解析によるプロトンの可視化の研究」という2つのサブテーマを遂行した。まず前者のテーマ実施状況について説明する。親水性アミノ酸残基側鎖のプロトン化状態とそれに対応する構成原子間の結合角や結合長の微細変化を大型放射光施設SPring-8でのX線結晶回折実験を通して検出することに成功した。1Å付近の超高分解能での観察の結果、ADPRase活性部位に保存されたGlu85の存在がADPRaseの一般塩基作用の重要な必要条件の一つであることが判明した。Glu85はNudixモチーフに保存されていながら、その役割については全く明らかにされていなかった。既に報告されているADPRase-G1n85点変異体のpHに依存したADPR加水分解活性の再解釈を通して、Glu85による求核性水分子からのプロトン排出の方向づけを含めた全く新規なADPRase反応機構を提案するに至った。次に後者のサブテーマについては、サイズを拡張した大型シッティングドロップ蒸気拡散法によって従来より10倍程度大きいADPRase結晶が得られたところである。今後の陽子加速器施設J-PARCにおける中性子線照射に向けて重水置換操作を行っているところである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「9. 研究実績の概要」に示したように、2つのサブテーマのうち前者については当初予定した計画の90%を達成し、学会での発表も済んでいる。参加した2つの学会ではいずれもポスター賞を受賞しており、論文作成の見通しが立っている。後者のサブテーマについてはJ-PARCでの実験に向けた準備は大方終了しており、次年度の研究活動を通して当初計画の大部分を達成できる見通しが立ったと言える。
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Strategy for Future Research Activity |
「9. 研究実績の概要」に示した2つのサブテーマのうち前者については論理を補強する補助データの取得を目指す。当初計画を越えてNMRによる溶液相実験によるADPRase酸解離特性の見積もりと計算シュミレーションによるADPRase活性部位の量子化学的性質の考察を計画している。後者のサブテーマについては平成26年5月に割り当てられたJ-PARCでの実験シフトを利用して大型ADPRase結晶に対する中性子線照射実験を開始する。
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Research Products
(3 results)