2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
13J05035
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
岩垣 真人 一橋大学, 大学院法学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 会計検査院 / 公法単 / 国際情報交換 / フランス / 行政学 / コオル / 専門性 / ジェネラリスト |
Research Abstract |
平成25年度の研究目標・計画は、基礎的な文献に目を通しつつ、コオル=特権団体としての自律性をいかに会計検査院が獲得してきたか、その歴史過程を分析する、というものであった。現在、第五共和制期に至るまでの制度的歴史過程の分析を終える、という当初の目標は完遂しなかったが、平成25年度の研究では、フランス本国において出来している、会計検査院を巡る現在の最新の議論について理解を深め、その新たな問題意識から、研究に、下記の2点の新たな視角を得ることが出来た。 まず、第一の視角は、専門家集団としての会計検査院構成員が、「単に専門能力のみを期待される存在ではない」というものである。むしろ、彼らはフランスの伝統的な人文的素養を、特にグラン・ゼコールにおける高等教育の段階において血肉化させた人々であり、国家全体を上から脾睨しうる、ジェネラリストとして観念されている。高度に専門性が要求される会計検査業務・評価業務を、このようなジェネラリストが専門的能力も(場合によっては業務遂行過程で)習得しつつ、実施していくことが、フランスに特徴的な専門能力の取扱い手法である、と言える。 次ぐ視角として、フランス本国における最新の動向として注目を浴びる、評価、特に政策評価を軸とした議会統制、を挙げることが出来る。二大政党制による政権交代が実現しているフランスでも、選挙が終了し始まる通常の議会において、行政権を、議会がコントロールすることは難しい。そのような現代的な問題状況を受け、フランスの憲法学界では、(政策)評価を梃子に、議会による統制を検討する、というアプローチが重要視され始めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度は、第五共和制期に至るまでの制度的歴史過程の分析を終えるという研究開始前の計画からは、ややその軌道をずらしつつも、当初計画立案時にはなかった、新規の観点・視点を獲得することが出来・有益な一年となったため。さらに、この1年の成果は、既に論文として結実し、平成26年7月発行の、『一橋法学』第13巻2号に、掲載されることも予定されているため。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度の研究により獲得した視角をベースに、平成26年度以降は、まず、現時点に至るまでの、会計検査院の歴史的・制度的分析を完遂させる。そのことと並行し、現在本国フランスにおいて関心を集める、(政策)評価による政府統制・行政統制、というアプローチについて、従来の伝統的な「統制」概念であるところの、公役務概念、そして公益概念との異同、さらには交錯する関係について明らかにする。また、本研究の最終的な目標は、フランス会計検査院研究を通じ、日本における専門性のあり方を分析するものであるため、フランス会計検査院の分析を通じた成果をベースに、日本の会計検査院はもちろん、蓄積のある技官研究などをも広く検討の対象とし、それらを結合しうるような深い分析と比較を行っていく。
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Research Products
(3 results)