2013 Fiscal Year Annual Research Report
運動回路の可塑的発達を制御する分子・細胞メカニズムの解明
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13J05061
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
伏木 彬 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | ショウジョウバエ / GABA作動性神経細胞 / 運動神経回路 / 機能発達 / 電子顕微鏡 / シナプス |
Research Abstract |
ショウジョウバエ幼虫の中枢神経系における介在神経細胞の働きについては不明なところが多い。特に運動回路における役割についてはほとんど明らかにされていない。そこで本研究では、抑制性神経細胞の一種であるGABA作動性神経細胞に着目をして、ショウジョウバエ幼虫の運動回路の機能解析を行った。 ショウジョウバエ幼虫の中枢神経系内ではGABA作動性神経細胞は多数存在する。その中で、ぜん動運動の波に沿って強く活動するGABA作動性神経細胞を一つ同定し、本研究ではこの神経細胞をGDLs (GABAergic dorsolateral neurons)と名づけた。 まずGDLsの運動制御における働きを調べた。三齢幼虫期にGDLsの活動を亢進させると、幼虫の腹部の筋肉を弛緩して動けなくなることが分かった。一方で、神経伝達を一時的に阻害すると幼虫のぜん動運動が速くなることが分かった。次にGDLsの活動を胚期から三齢幼虫期を通して抑制したところ、ぜん動運動に著しい機能障害が見られた。以上の結果から、GDLsはぜん動運動を制御する介在神経細胞であり、運動回路の機能発達においても主要な役割を担っていることが示唆された。 最後に、GDLsが運動神経細胞とシナプスを形成しているかをGRASP (GFP reconstitution across synaptic pamers)-techniqueを用いて検証したところ、GDLsのシナプス前終末にGFPシグナルは検出されなかった。これはGDLsと運動神経細胞は直接シナプス結合をしていないことを示唆する。次に、ショウジョウバエ幼虫の腹部神経節の電子顕微鏡連続切片画像を用いてGDLsを再構築し下流の神経細胞を探索したところ、いくつか介在神経細胞を同定した。この下流の神経細胞のうち一つは、当研究室の先行研究により同定されているPMSI (period-positive median segmental interenurons)神経細胞であり、運動神経細胞と直接シナプスを結び、ぜん動運動の制御に関与していることが分かっている。このようにGDLsと下流の細胞との機能的な結合を調べることにより、ぜん動運動における新たな制御機構が明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
神経回路の機能発達を調べる上で、まず着目している神経細胞(GABA作動性神経細胞)のシナプス結合先を調べる必要がある。これは電子顕微鏡連続切片画像(共同研究)を用いることで、上流及び下流の神経細胞をいくつか同定することが出来た。今後は機能的な結合をより詳細に調べることで、運動回路に可塑的変化が生じた起因を明らかにする。
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Strategy for Future Research Activity |
着目しているGABA作動性神経細胞の運動回路における働きは、その細胞の活動を亢進または抑制させることである程度予測することが出来た。しかし、実際に抑制性の作用を及ぼしているかは定かではない。それを明らかにするためには、電気生理学を用いてシナプス結合先の神経活動をより詳細に調べる必要がある。この細胞の活動を運動回路の発達期(胚発生後期)に抑制したところぜん動運動に可塑的変化を及ぼした実験結果は興味深い一方で、運動回路の完成期(三齢幼虫期)における役割についてまだ不明な点が多く、その時期における機能的な働きについて今後詳しく調べる予定である。
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Research Products
(2 results)