2014 Fiscal Year Annual Research Report
変動する海洋環境下での海鳥による窒素供給が沿岸海洋生態系におよぼす影響の解明
Project/Area Number |
13J05174
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Research Institution | Meijo University |
Principal Investigator |
風間 健太郎 名城大学, 農学研究科, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 窒素循環 / 海洋生態学 / 海藻 / 海鳥 / 生態系サービス / 土壌窒素動態 / 硝化 / 脱窒 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、海鳥の一種であるウミネコが外洋域から輸送してきた窒素が営巣地周辺の沿岸域の海藻類や底生・固着生物の成長や生残に及ぼす影響を、安定同位体分析を用いて明らかにする。 課題二年目である平成26年度は、北海道利尻島のウミネコ営巣地において、ウミネコの糞による影響が、繁殖数や繁殖行動の年変動によって年ごとにいかに変わるかを明らかにした。ウミネコの繁殖期である6月と7月、繁殖終了後の11月にそれぞれ北海道利尻島を訪れ、ウミネコの繁殖状況調査、営巣地土壌の採集と海洋生物採集を行った。 ウミネコの繁殖数および繁殖場所は昨年(旧営巣地)から大きく変わり、営巣場所はより内陸の牧草地に移動し、営巣数は半減した。旧営巣地の土壌窒素含量は昨年から大きく減少し、営巣地外とほぼ同様になった。土壌中の無機態窒素の測定により、ウミネコの糞由来窒素の無機化、硝化、および脱窒反応は土壌中で数カ月以内に進行することが明らかとなった。糞由来の窒素の大部分は、溶脱、脱窒、あるいは植物に取り込まれることにより、ウミネコの営巣が無くなってからわずか一年で消失することが示唆された。糞由来の窒素の大部分は、溶脱、脱窒、あるいは植物に取り込まれることにより、ウミネコの営巣が無くなってからわずか一年で消失することが示唆された。 旧営巣地直下の磯では、窒素供給が無くなった一年後においても海藻体内に含有されている窒素の安定同位体比は高く、磯では営巣地消失後もウミネコ糞由来窒素の影響が継続していた。このことから、磯では営巣地消失後も地下水などを通じて旧営巣地の土壌に蓄積された糞由来の窒素が継続的に染み出していることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
調査地のウミネコ営巣地が移動・消失したことにより、当初の計画にあった「ウミネコ繁殖数の年変動効果」がこれ以上ない形で検証できた。また、過去の土壌サンプルの分析により「海鳥営巣地土壌の窒素動態に津波が及ぼす影響」についての原著論文を、さらには文献調査によって「鳥類がもたらす生態系サービス」についての総説論文を発表するなど、本研究課題に関連する業績を複数発表することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度も同様の野外調査を継続する。もしウミネコが旧営巣地にて営巣を再開した場合は、再び糞由来窒素の影響が現れるプロセスを詳細に明らかにする。一方、もしウミネコが旧営巣地で営巣を再開しなかった場合は、磯における糞由来窒素の影響がいつまで継続されるのかを明らかにする。これらの調査によって、ウミネコの繁殖活動の動態によって周辺生態系の生物多様性維持機構がどのように変化するのかを明らかにする。課題最終年度のため、論文執筆も鋭意推進する。
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Research Products
(8 results)