2013 Fiscal Year Annual Research Report
消化管運動機能障害におけるペースメーカー細胞の可塑性と機能異常の解明とその再建
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13J05175
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
梶 典幸 東京大学, 大学院農学生命科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | カハール介在細胞 / 消化管 / 炎症 |
Research Abstract |
本研究は腸管のペースメーカー細胞であるInterstitial cells of cajal (ICC)における炎症性あるいは代謝異常シグナルに対するICC可塑性とペースメーカー機能変化を解明することを目的とする。本年度はマウス小腸筋層をコラゲナーゼ処理することで得たcell clusterを用いて、様々な炎症性メディエーターのICCペースメーカー機能に及ぼす影響を検討した。まず、cell clusterを構成する細胞群を確認するため、免疫染色学的解析を行った。その結果、cell clusterは平滑筋、ICC、神経、マクロファージを含んでいることが明らかとなった。これはcell clusterが腸管筋層の細胞間ネットワークを維持していることを示唆し、ICC機能を評価する上で有用な実験モデルであると考えられた。次に様々な炎症性メディエーターのICCペースメーカー機能に及ぼす影響を検討するため、cell clusterに炎症性メディエーターを24時間処置した後にfluo-3を用いてカルシウムイメージングを実施した。Th1サイトカインであるIL-1β、TNF-α、IL-6、IFN-γ、Th2サイトカインであるIL-4、Th17サイトカインであるIL-17(各25ng/mL)はICCペースメーカー機能に影響を与えなかった。また、LPS (10μg/mL)もICCペースメーカー機能に影響を与えなかった。しかしながら、IFN-γとLPSの併用処置(IFN-γ/LPS)はカルシウムオシレーションの振幅および頻度を有意に減少し、ICCペースメーカー機能を著しく障害した。以上の成績からICCペースメーカー機能は多くの炎症性サイトカインに抵抗性を持つ一方で、IFN-γ/LPSにより有意に抑制され、このことはICCが感染による炎症反応に感受性が高いことを示唆する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定していたICC単離培養系を用いた機能解析は確立できなかったが、cell clusterを用いたICCペースメーカー機能の評価系を確立することができた。また、ICCペースメーカー機能が多くのサイトカインに抵抗性を持つ一方で機能を障害する炎症性メディエーターを見出すことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
IFN-γ/LPSによるICCペースメーカー機能の抑制にはICCへの直接作用およびマクロファージを介した間接作用が考えられるため、ノックアウトマウスやリポソーム封入クロドロネートを使用し検討を行う。さらにメディエーターとして一酸化窒素やプロスタグランジン、他のサイトカインが関与している可能性が考えられるため、これらの阻害剤を使用することでより詳細なメカニズムを検討する。in vivoの実験系としてIFN-γ/LPSをマウスに投与し、ICCネットワークや機能の変化を調べる。また、その際のICCの遣伝子発現変化を調べ、病態時ICCマーカーの検索を行う。
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