2014 Fiscal Year Annual Research Report
消化管運動機能障害におけるペースメーカー細胞の可塑性と機能異常の解明とその再建
Project/Area Number |
13J05175
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
梶 典幸 東京大学, 農学生命科学研究科, 特別研究員(DC1)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | カハール介在細胞 / ICC / 消化管 / 炎症 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は消化管運動におけるペースメーカー細胞であるInterstitial cells of Cajal(ICC)における炎症性あるいは代謝異常シグナルに対するICC可塑性とペースメーカー機能変化を解明することを目的とする。前年度までにマウス筋層より得た小細胞塊(cell cluster)を用いたICC機能評価系によりIFN-γ+LPS刺激がICC機能を著しく障害することを見出しており、本年度はその更なる詳細なメカニズムを明らかにするため実験を行った。まず、IFN-γ+LPS刺激によるcell clusterにおける一酸化窒素合成酵素(iNOS)の発現を確認した。その結果、iNOS発現細胞はcluster構成細胞の中でも平滑筋および常在性マクロファージに限られており、ICCには発現がないことが明らかとなった。次に、このiNOSにより産生されたNOがICC機能に及ぼす影響を確認するために、NOS阻害剤(L-NAME)を用いた検討を実施した。NOS阻害剤の前処置はIFN-γ+LPSによるICC機能の障害を有意に抑制した。以上の検討によりIFN-γ+LPS刺激によるICC機能障害の発生にはICC周囲に存在する平滑筋やマクロファージのiNOSにより産生されたNOが関与していることが明らかとなった。NOの下流シグナルは大きく分けて1)cGMP/PKCシグナル、2)S-ニトロシル化、3)酸化ストレスが挙げられる。そこで次にIFN-γ+LPS刺激によって発生したNOによるICC機能障害がどのようなメカニズムで発生しているかを詳細に検討するために、これらの下流シグナルに関して実験を行った。その結果、IFN-γ+LPSによるICC機能障害はcGMP/PKCシグナルおよび酸化ストレスを介して発生することが明らかとなった。以上の成績から炎症時におけるICC機能障害発生のメカニズムが示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の実験計画として当初予定していたIFN-γ+LPSによるICC機能障害発生の詳細なメカニズムを明らかにすることができた。また、これらの結果からICCが酸化ストレスに感受性が高いことが示唆され、消化管の炎症性または代謝性疾患におけるICC障害発生のメカニズムを検討する上で重要な知見を得ることができた。一方で、in vivoの実験系を用いた検討は十分に行えていない。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成27年度は、26年度で得た結果をさらに精査するとともに、これまでのin vitorでの結果を基にin vivoにおけるICCの炎症病態変化について検討していく。具体的な項目を以下に挙げる。 ①cell clusterを用いた系により、IFN-γ+LPS刺激がICCの形態に及ぼす影響を免疫染色および電子顕微鏡解析により検討する。 ②IFN-γ+LPS刺激によるICC機能の変化が可逆的であるかどうか(=ICC可塑性)、ICC機能の経時的観察や細胞死マーカーを用いて検討を行う。 ③In vivoの検討として各種腸炎モデル(DSS誘発性腸炎、TNBS誘発性腸炎、術後イレウスモデル)または敗血症モデルを用いて、ICC障害の発生とIFN-gやLPS、NO、酸化ストレスの関与について検討する。 また以上の成果をまとめ、論文としてジャーナルへの投稿を行う。
|
Research Products
(4 results)