2013 Fiscal Year Annual Research Report
神経保護・軸索保護に基づく新規脳内出血治療薬創出に関する研究
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13J05194
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
肱岡 雅宣 熊本大学, 薬学教育部, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 脳内出血 / 軸索傷害 / 運動機能障害 / 軸索輸送阻害 / トロンビン |
Research Abstract |
本研究では、脳内出血時の運動機能障害等の病態進行の要因として、内包領域を通る大脳皮質脊髄路の傷害を予想した。そこで順行性トレーサーで標識した皮質脊髄路が脳内出血惹起によって損傷を受けるか評価したところ、出血惹起によってBDA陽性領域の減少がみられた。さらに、軸索の指標であるneurofilament Hに対する免疫染色を施すことで、出血惹起6時間後から軸索形態の変性がみられた。しかしながら、脳内出血時の運動機能障害は出血惹起3時間後には観察されるため、運動機能障害をもたらす要因が他にも存在することが考えられた。その要因として着目したのが軸索輸送阻害である。Amyloid precursor protein (APP>は軸索輸送されるタンパク質であり、軸索の損傷に伴い蓄積することが知られている。APPに対する免疫染色の結果、出血惹起3時間後にはAPPの蓄積が観察され、軸索輸送阻害が起きていることが示された。そこで、軸索輸送阻害薬であるcolchicineを内包に投与したところ、出血惹起時と同様の運動機能障害がもたらされた。また、colchicine投与により軸索形態の変性も観察されたことから、脳内出血時には軸索輸送阻害が起こることで軸索傷害および運動機能障害がもたらされることが分かった。 脳内出血時には、血中の様々な成分が病態形成に関わるが、今回は血液凝固因子のひとつであるトロンビンに着目した。トロンビンを内包に投与したところAPPの蓄積および軸索形態の変性がもたらされた。トロンビン受容体を刺激するペプチドの投与によってはAPPの蓄積および軸索形態の変性は見られなかったため、脳内出血病態形成にはトロンビンの受容体非依存的作用が関わることが示された。 本結果は初めて皮質脊髄路の傷害に着目し、その過程を示した点で今後の脳内出血病態に対する理解を深める重要な知見であると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初申請書に記したin vitro系での軸索傷害メカニズムの解明には至っていないものの、次年度に予定していたin vivo実験系において、脳内出血時に軸索傷害が起こる過程を示すことができた。本結果は現在投稿準備中である。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画では初年度に見出した治療ターゲット候補分子の発現抑制を行うことで病態改善が見られるか検討する予定だった。しかし、初年度の研究結果では脳内出血病態の形成が非常に早期におこることから、治療困難であることが懸念される。そこで、2年目では出血病態に伴う周辺症状(うつ様症状や認知機能)の発症メカニズムの解明および治療薬の探索、さらに脳内出血によって損傷した神経回路の再構築に関して研究を行う。
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Research Products
(3 results)