2014 Fiscal Year Annual Research Report
神経保護・軸索保護に基づく新規脳内出血治療薬創出に関する研究
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13J05194
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
肱岡 雅宣 熊本大学, 生命科学研究部, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 脳内出血 / 好中球 / ロイコトリエンB4 / 5-リポキシゲナーゼ |
Outline of Annual Research Achievements |
脳内出血とは脳実質内への血液の漏出による疾患であり、非常に重篤な病態を示す。近年の研究により、血腫の形成に伴い浸潤してくる多数の白血球の中で、特に好中球が軸索の損傷や髄鞘の脱落に関与することが報告されており、好中球の浸潤を抑えることが脳内出血に対する新たな治療戦略として注目されている。一方で我々も好中球の遊走を促す因子であるCXCL2ケモカインの発現量が脳内出血時に増加することや、その受容体であるCXCR1/2アンタゴニストの投与により病態の改善が見られることをすでに報告している (Matsushita, Hijioka et al., 2014)。今回は脂質メディエーターであり、強力な走化性因子として知られているロイコトリエンB4 (Leukotriene B4: LTB4) に新たに着目した。 LTB4の生合成はアラキドン酸の代謝によってもたらされるが、その過程には数種の酵素が存在する。まずは脳内出血時に各種酵素の発現量が変化するか調べたところ、5-リポキシゲナーゼ (5-LOX) および5-リポキシゲナーゼ活性化タンパク質 (FLAP) のmRNAレベルが著明に増加していた。さらに5-リポキシゲナーゼ阻害薬であるZileutonを連日投与し、5-LOX阻害条件下で脳内出血病態を観察した。連日のzileuton投与により、脳内出血惹起72時間後の血腫内におけるmyeloperoxidase陽性好中球数が有意に減少した。また、zileuton投与によって血腫の大きさには影響は与えなかったものの、歩行機能や四肢の反射等を評価した際のスコアが軽減された。 以上の結果から、脳内出血時にはLTB4が生合成されることで好中球の遊走が促進され、病態進行が悪化することが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は昨年度までとは異なる視点から軸索傷害メカニズムの探索に着手した。 脳内出血時の病態進行因子として新たにロイコトリエンB4に着目し、その産生に関わる酵素である5-リポキシゲナーゼ阻害条件下で脳内出血時の運動機能が軽減されることを主に見出した。このことは脳内出血に対する新たな治療ターゲットの創出につながる情報を提供したものと評価できる。 また、前年度に得た軸索障害関連の知見についても、学会発表や論文投稿による外部公表が順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の研究結果を元にさらに詳細な検討を行う予定である。 今年度はロイコトリエンB4 (LTB4) の標的は好中球であると仮定し、研究を進めていた。しかし、過去の報告によるとマクロファージや他の細胞においてもLTB4が作用しうることが示されている。そこで脳内出血時のLTB4の役割として様々な細胞種への影響を観察する。 さらにLTB4受容体をターゲットとした、脳内出血治療薬候補化合物の探索も行う予定である。
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Research Products
(3 results)