2013 Fiscal Year Annual Research Report
マクロファージの慢性ストレス応答におけるエピジェネティック制御機構
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13J05231
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
仙波 宏章 東京大学, 医学部附属病院, 特別研究員(DC2)
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Keywords | マクロファージ / 低酸素 / 炎症 / エピジェネティクス / HIF-1α / ChIP / FAIRE |
Research Abstract |
慢性的ストレス環境におけるマクロファージの遺伝子発現機構は、動脈硬化性疾患や心不全などあらゆる循環器疾患の病態基盤として重要であるものの、詳細な知見に乏しいのが現状である。本研究では、エピジェネティクスという新たな観点からそのメカニズムを解明していくことを目的としている。 研究者は、クロマチン免疫沈降法(ChIP)やFormaldehyde Assisted Isolation of Regulatory Elements (FAIRE)などの実験手技、次世代高速sequencerによる網羅的なデータの取得、得られた複数のビッグデータをもとにした網羅的解析法、などエピジェネティクスの解析に必要な手技を順調に会得した。 現在は主に低酸素刺激と炎症性刺激という2つのストレスに注目し、検討を進めている。低酸素に対する遺伝子応答の鍵因子であるhypoxia inducible factor 1α(HIF-1α)は、炎症性刺激においても誘導され重要な役割を果たしていることが近年示されてきた。研究者は、低酸素・炎症(LPS)刺激のいずれでもHIF-1α蛋白が発現することをWestern blottingにより確認し、各刺激下におけるHIF-1αのDNA結合部位をChIP sequenceにより網羅的に解析し、比較検討した。その結果、低酸素・LPS刺激の両者に共通するHIF-1α結合部位だけでなく、刺激特異的な結合部位も少なからず存在することが明らかとなった。さらに、クロマチン構造の開閉状態を示すEAIRE sequenceのデータも合わせて統合的に解析すると、刺激依存的なクロマチン構造の開閉とHIF-1α結合が連関する傾向にあった。現在、ストレス環境依存的なHIF-1α結合のメカニズムについて、クロマチン構浩変化・ヒストン修飾変化などの情報を追加し検討を続けている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
様々なストレス環境下で誘導され重要な働きを担う転写因子HIF-1αに注目し、その環境依存的な動態を新たに見出すことができた。さらにその結合動態とクロマチン構造変化との連関についても、現在検討を継続しており、現在までの達成度としては順調であると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度に得られた環境依存的なHIF-1α結合動態について、クロマチン構造変化との連関を明らかにし、さらにヒストン修飾変化などの情報を重ね統合的解析をすることでそのメカニズムについても解明を目指す。 主要な実験手法や解析手法は既に会得しており、現時点で明らかな問題点は認められない。
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