2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
13J05316
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
安原 秀和 神戸大学, 大学院人文学研究科, 特別研究員
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Keywords | 聴覚情景分析 / 交差・反発現象 / 視聴覚間の共通性 |
Research Abstract |
【研究内容】耳に届く音がどこで、どのように生じたかを解釈することを「聴覚情景分析」という。申請者は聴覚情景分析における音の情報のまとめ方の規則に着目し、聴覚の交差・反発現象を用いて実験を行なった。聴覚の交差・反発現象とは、時間とともに音の高さが高くなる音(上昇音)と低くなる音(下降音)を組み合わせたX宇型の聴覚刺激の聴こえ方に多義的な解釈が生じる現象である。一つの聴こえ方の解釈は音の高さが徐々に高く、または低くなる聞こえ方(交差知覚)、もう一つは音の高さが徐々に高くなるが途中で低くなる聞こえ方や、音の高さが徐々に低くなるが途中で高くなる聞こえ方(反発知覚)である。申請者は、聴覚の交差・反発現象起おいて、上昇音と下降音が交わる時点に短い挿入音を提示すると、交差から反発へと音の聴こえ方が変化することを発見した。そしてその原因は、挿入音が元々の聴覚刺激を聴こえにくくしたためだと考えられる。そこで、聴覚の交差・反発現象において、突然の出来事が音の聴こえ方を変化させた原因は、挿入音による音のさえぎりであるか否かを検討した。実験の結果、空隙あり条件と空隙なし条件において聞こえ方の反応の有意差はみられなかった。このことから、挿入音の提示によって交差知覚から反発知覚へと変化したのは音のさえぎりによるものではないことがわかった。【研究意義】先行研究において挿入音が視覚の交差・反発知覚を変化させる知見があった。本研究の知見は従来の視覚研究の知見を聴覚の側から確認することで、脳の情報処理原理について感覚モダリティを通じて妥当な説明が可能にするものである。【研究の重要性】本研究は耳に届いた音がどのように知覚されたかを解釈する機能である「聴覚情景分析」を扱う。聴覚情景分析に纏わる謎の解明は、ヒトの備える、周囲の情報を効率的に理解する機能解明の一助となる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
一年次において実験を十分に行なうための環境を整備できた。そして、実験結果を論文としてまとめることができた。そのため、計画はおおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
25年度に行なった研究について、異なる条件で追加実験を行なう必要がある。その実験が終わり次第、次に予定している実験を行う予定である。 また、現在は実験を行い、結果をまとめることに力を注いでいるが、学会発表を通じて他の研究者と議論を重ねる必要がある。今後は実験によって得られた知見を論文などで外に発信することで申請者の研究の結果や意義をより良いものへと磨きあげなければならない。
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