2013 Fiscal Year Annual Research Report
大規模分子シミュレーションによる高機能性光学物質の理論設計
Project/Area Number |
13J05320
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
吉川 武司 早稲田大学, 理工学研究科, 特別研究員DC2
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Keywords | 線形スケーリング / 分割統治法 / GPGPU / RI近似 |
Research Abstract |
本研究では、光機能性分子における発光メカニズムや励起緩和等をナノスケールレベルで解明することを目的としている。ナノスケールレベルで励起ダイナミクスを考慮するためには、非局所励起に対する大規模計算理論が必要である。従来の分子軌道ベースの励起状態計算では、非局所励起状態を取り扱うためには全体の分子軌道を構築する必要があるが、分割型計算理論では全体の分子軌道を取り扱うことはできない。一方で、分割統治(DC)法では全体の密度行列を容易に構築することができるため、従来の分子軌道ではなく、密度行列を基にした励起状態計算法を開発した。(研究業績1) 一方で、ナノスケールの集積系では原子数は数千~数万個を超え、分子シミュレーションを行う場合には、DC法を利用した場合でも計算コストが増大してしまう。そのため、効率のよい並列処理アルゴリズムを用いて計算時間のさらなる短縮を行う必要がある。そこで、DC法に対して、高い演算性能をもつGPUを用いた高並列計算を行うことのできるアルゴリズムを開発した。(研究実績2)また、さらなるコストの削減を目指して、コストの高い4中心積分を2中心積分と3中心積分で近似を行うresolution-of-the-identity (RI)近似の導入も行った。(研究実績3、4) 大規模分子に対して適用が可能であることを検討するために、光活性イエローたんぱく質に対してDC-RI-MP2計算を行った。基底関数は6-31Gで、補助基底関数はcc-pVDZを用いた。DC法を用いることにより必要メモリが2500GBから62.6MBと計算コストを大幅に減少することが可能である。また、通常のMP2計算ではCPU8コアを使った場合推定で57日かかっていたものがGPUを4枚利用することで4.1時間の計算時間で計算することが可能である。(研究実績4)
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1年目と2年目の実施計画における方法論と超並列アルゴリズムの開発を初年度に全て行った。ともにプログラム開発であったため、初年度はそれを中心に行った。それにより、この後行う性能評価の計算時間を大幅に短縮することが可能となる。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度に開発したプログラムを用いて、大規模系に対する励起ダイナミクスシミュレーションを実現する。その後、光機能性分子における発光メカニズムや励起緩和、電子・ホール輸送等をナノスケールレベルで検討を行う。さらに、結合エネルギー密度解析法を利用することにより、励起子移動過程における相互作用変化を詳細に検討する。
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Research Products
(5 results)