2014 Fiscal Year Annual Research Report
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13J05325
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
石田 惣平 一橋大学, 商学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 保守主義 / 条件付保守主義 / 無条件保守主義 / 設備投資 / 銀行借入 / 社外役員 / メインバンク / 金融危機 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、会計保守主義がもたらす経済的帰結に関して実証的に検証することにある。平成26年度は、次の4つの研究に着手した。なお、平成25年度から行っている"The Effect of Accounting Conservatism on Corporate Financing Activity: Evidence from Japan"(研究2)は現在進行中である。 第1の研究は「世界金融危機下における会計保守主義と資金調達制約」(研究3)である。研究3は世界金融危機に焦点を当てて、無条件保守主義が日本企業の資金調達制約にどのような影響を及ぼしたのかを検証している。検証の結果、金融危機後、多くの企業は設備投資と人的投資を抑制しているが、無条件保守主義の程度が高い企業ではこれらの抑制幅が小さいことが明らかとなった。 第2の研究は「会計保守主義とエージェンシー問題との関係性に関する予備的考察」(研究5)である。研究5から、ガバナンス・メカニズムが存在しない場合、エージェンシー対立と条件付保守主義の間には負の関係があることが確認された。また、ガバナンス・メカニズムを考慮した場合、エージェンシー対立が深刻な企業ほど条件付保守主義の程度が大きくなることが明らかとなった。 第3の研究は「会計保守主義と内部資金に対する投資の感応度」(研究6)である。研究6は無条件保守主義は内部資金に対する投資の感応度を緩和する一方で、条件付保守主義には少なくともそうした緩和効果は観察されなかったことを報告している。 第4の研究は「会計保守主義と企業の現金保有」(研究7)である。研究7の発見事項は次の通りである。ひとつには、保守主義の程度が高い企業ほどより多くの現金を保有していることが確認された。いまひとつには、企業が予備的動機を強く有している場合、保守的な会計処理によってより多くの現金を保有していることが明らかとなった。ただし、これらの発見事項は無条件保守主義についてのみに確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度は国内学会3回、海外学会3回の報告を行った。また、研究5は『一橋商学論叢』(査読付)に掲載された。また、研究3、研究6、研究7については現在、査読付雑載に投稿中である。平成25年度から引き続き行っている研究2についても現在いくつかの海外学会での報告が予定されている。ただし、平成25年度研究を進めていく予定であった「会計保守主義と企業の減配行動」(研究4)は諸事情により、研究を中断している。こうした理由から、平成26年度の達成度を「おおむね順調に研究を進展している」としている。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度である平成27年度は研究2を海外学会で報告し査読付雑誌へ投稿をする。研究3、研究6、研究7については現在査読付雑誌に投稿中であるゆえ、査読が終了次第修正を行い、再投稿をする。また、これらの研究に加えて、「会計保守主義と雇用調整の下方硬直性」(研究8)と「会計保守主義と企業の倒産可能性」(研究9)を勧めていく予定である。
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Research Products
(7 results)