2013 Fiscal Year Annual Research Report
素粒子標準模型の拡張における複数種類の暗黒物質の解析と検出可能性の検証
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13J05336
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
高野 浩 金沢大学, 大学院自然科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 暗黒物質 / ニュートリノ / 幅射シーソー機構 |
Research Abstract |
暗黒物質を安定な素粒子であると考える場合、なんらかの対称性によってその安定性が保障されていると考えるのが一般的である。複数の暗黒物質を含む典型的な標準模型の拡張では、そのような対称性が複数同時に存在していることで実現される。本年度は、複数の暗黒物質を含む標準模型の拡張として、輻射シーソー模型に着目して解析を行った。輻射シーソー模型とはニュートリノの持つ非常に小さな質量を、近い将来に発見する可能性のあるTeVスケールの物理で自然に説明することを目的とした拡張模型である。中でもMa模型と呼ばれる暗黒物質を1つ含む模型について、理論的に非常に小さな相互作用が必要となるという不自然な点を自然に説明するための拡張を行った。この拡張によって追加される新たな離散対称性によって、小さな相互作用を量子補正によって生成することができ、暗黒物質は複数種類同時に存在することになる。 フェルミオン暗黒物質が存在するシナリオでは、異なる暗黒物質同士の対消滅反応によって、単色のエネルギースペクトルを持ったニュートリノが生成される。このようなニュートリノは太陽中に重力で集められた暗黒物質の衝突により生成されることが期待されるが、今回解析した幅射シーソー模型では最大でIceCube実験によって観測される背景シグナルより1桁程度小さいシグナルを与える事が分かった。また、暗黒物質の直接探索実験におけるシグナルは複数の暗黒物質シグナルの和を実験におけるイベント数の上限と比較することで理論を検証することが出来る。解析の中で、複数の暗黒物質密度の時間発展を記述するボルツマン方程式を模型によらない形で定式化し、物理的な理解を得ることが出来た。中でも重たい暗黒物質について、異なる暗黒物質同士の対消滅による効果は通常の対消滅反応と比べて非常に大きくなり、残存量を著しく減らす傾向があることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
複数種類の暗黒物質を含む系の記述を、拡張模型の詳細によらない形で定式化できた。さらに具体的な拡張模型において、従来の暗黒物質残存量の求め方では考慮されない対消滅反応の重要性を明らかにすることができた。したがって研究はおおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は主に冷たい暗黒物質と呼ばれる十分に非相対論的な暗黒物質を扱ってきた。暗黒物質が複数存在する場合のもう一つの可能性として、暗黒物質候補のひとつが小さな質量または質量ゼロとなり、相対論的にふるまうようなシナリオを現在調査中である。相対論的にふるまう暗黒物質候補は温かい暗黒物質または暗黒輻射としてふるまう可能性がある。温かい暗黒物質は冷たい暗黒物質よりも速度分散が大きく、宇宙の大規模構造形成において小さなスケールの密度揺らぎを均す効果を持つ。また、暗黒輻射とは光子やニュートリノ以外の観測にかかっていない輻射成分である。さらにバリオン数非対称の問題にも取り組み、拡張模型のパラメータが持つ自由度を限定することを狙う。
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Research Products
(7 results)