2013 Fiscal Year Annual Research Report
集団間の情報流通を考慮した集合的意思決定の理論と実験による分析
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13J05358
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Research Institution | The Graduate University for Advanced Studies |
Principal Investigator |
関口 卓也 総合研究大学院大学, 先導科学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 集合的意思決定 / コンドルセの陪審定理 / 判断集計 / 社会的影響 / 社会的選択理論 / 集団構成 / 分業 / 効率性 |
Research Abstract |
本年度は、情報の流通や集団の構成が集合的決定の精度に与える影響を理論的に分析した。具体的には、コンドルセの陪審定理を以下のように拡張した。第一に、各人が複数の論理的に結合した議題に対して投票する状況を扱った。その結果、個人間の意思決定に相関がある場合、各個人が正答率を高める努力をしたとしても、それによって集合的決定の帰結が論理学的に一貫する確率が高まるとは限らないことが分かった。第二に、意思決定をするタイミングが人によって異なる場合を扱った。全員が同時に意思決定する場合と異なり、意思決定するタイミングが異なると、先に意思決定した個人の意見が後続する個人の意見形成に影響を与えることが考えられる。本研究では、各人がある確率で独立に意思決定し、ある確率で先行する意思決定者の意見を模倣するという状況下での多数決による集合的決定の精度を分析した。結果として、独立に意思決定をした者が全体に占める割合が低下することと、先行して意思決定した個人間で、後続する個人の意見形成に与える影響力に格差があることという2つの要因によって集合的決定の精度が劣化することが分かった。第三に、陪審定理を分業の効率性の分析に応用した。具体的には、人数が固定された集団がn個の議題を扱わなくてはならないため集団をn分割し、分割された下位集団が多数決によって集合的決定を行う場面を考える。各下位集団は多数決の決定が正しいと利益を得られるが、そうでないときは何も得られないとするとき、任意の議題数に対して、個人の正答率が0,5より大きい(小さい)場合は等分割が集団の利益を最大化(最小化)することが明らかになった。さらに、1回の意思決定ごとにコストがかかる場合に、集団成員全員による意思決定をn回繰り返すのと、n個の下位集団が同時並行で意思決定するのとでは、どちらがどのようなときに効率的かを分析した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
陪審定理をもとにした研究を当初から計画していたが、予想以上に様々な拡張の余地があることが分かり、予定以上の研究成果を生み出し発表することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、選好の多様性などを考慮した理論の精緻化と共に、実証研究もすすめていきたい。
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Research Products
(9 results)