2013 Fiscal Year Annual Research Report
朝鮮燕行録とベトナム如清録から見た東アジア国際関係史研究
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13J05372
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
木村 可奈子 京都大学, 文学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 国際関係史 / 東アジア / 燕行録 / 如清録 |
Research Abstract |
本年度は燕行録研究を進めるため、韓国・ソウル大学奎章閣国際韓国学研究センターでの研究指導委託による在外研究を開始した。そのため朝鮮燕行録の精読と、目本と韓国での資料収集を中心に行い、東京大学史料編纂所、ソウル大学奎章閣韓国学研究院、韓国国史編纂委員会での未刊行史料の調査を行った。本年度の成果としては京都大学人文科学研究所「東アジア地域間交渉と情報」共同研究班で行った口頭発表「日本のキリスト教禁制による不審船転送要請と朝鮮の対清・対日関係」がある。本研究課題では清への燕行録、如清録を主な研究対象とするが、朝鮮は漢人の王朝であった明は「中華」として尊敬していたが、「夷狄」の満人の王朝であった清へは蔑視を持ち、朝鮮自身を中華の後継者とみなす小中華思想を持つようになっていった。そのため明への燕行録と清への燕行録では書き手の中国に対する考え方が異なっている。明清交代期にどのような過程を経て朝鮮が清朝との関係を築いていったのか、そしてそれが対日関係とどのような関係にあったのかを明らかにすることは、それ以後の朝鮮燕行録から東アジアの国際関係を探る上で非常に重要である。そのため本発表では、燕行録をはじめとする朝鮮史料や宗家文書、『清実録』等、朝鮮・日本・清三国の史料を用い、1640年代前後の中国の明清交代と日本の「鎖国」体制形成の狭間で、朝鮮が対清、対日関係をどのように行っていたのかを、日本の朝鮮に対する不審船転送要請を題材に実証的に提示した。朝日清三国の関係のみならず、日本の沿岸警備体制や当時のイエズス会の布教活動についても新たな視点を提示できたと考えている。本発表の内容はすでに論文として完成しており、近日中に査読誌に投稿予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究の基盤となる史・資料の収集は、日韓での収集に関しては順調に進んだ。本年度は残念ながら成果を論文の形で発表することはできなかったが、論文はほとんど完成しており、一定の成果を挙げられたと考える。まだ如清録を用いた成果は準備できていないので、こちらの研究の成果も出せるよう努める。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、予定していた古典ハングル文の勉強を本格的には始められなかったが、次年度からはソウル大学の研究者、学生と共に勉強会を行い、李義鳳(初名 : 李商鳳)のハングル燕行録『셔원녹』を精読する予定である。習得には当初の想定よりさらに時間が必要と判断したため、在外研究期間を延長する予定である。また韓国での在外研究を開始し、研究環境に慣れるまで予想より時間が掛かってしまったため、初年度は日本と韓国での史料調査しかできなかった。次年度は調査に行けなかったベトナム、中国、台湾で史・資料の収集を行う予定である。
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Research Products
(1 results)