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2013 Fiscal Year Annual Research Report

西風イベントが引き起こすENSO位相遷移メカニズムの解明

Research Project

Project/Area Number 13J05379
Research InstitutionThe University of Tokyo

Principal Investigator

林 未知也  東京大学, 大気海洋研究所, 特別研究員(DC1)

Project Period (FY) 2013-04-26 – 2016-03-31
Keywordsエルニーニョ現象 / 西風イベント / 季節内変動 / マデンジュリアン振動
Outline of Annual Research Achievements

西部熱帯太平洋で数日から数週間持続する西風(西風イベント)を含む熱帯太平洋における高周波な大気擾乱がエルニーニョ・南方振動(ENSO)に与える影響を調査するために,データ解析と数値モデルによる実験を行った.
まず,風と海面水温,長波放射の日平均データを用いたラグ相関解析によって,90日よりも高周波な(季節内周期の)成分の物理量間の関係を調査した.その結果,熱帯太平洋において東西へ数千km規模に伸びた海面水温の季節内変動とマデンジュリアン振動(MJO)のような大気の季節内周期成分が風応力と放射の変動とに有意な相関関係が確認され,大気季節内変動が海洋場の変動を駆動していることを示唆する結果が得られ,国内学会で報告した.また,MJOに関する基礎的なメカニズムについての理論的研究も行い,国際学会で報告するとともに国際誌に投稿した.
次に,大気海洋結合モデルMIROC5を用いて大気擾乱をJRA-55風応力の日平均値で制御した実験によって1958年以降の約60年間の海洋状態を高い相関で再現し,大気擾乱の季節内周期成分を除外した同様の数値実験を行った.その結果,実験で除外された大気の季節内周期成分の影響はENSOの正負の位相(エルニーニョとラニーニャ)に対して非対称であることが確認された.これらの研究で示された大気の季節内変動と海洋変動の関係は,大気擾乱がENSOの位相遷移に対して重要な役割を果たしうることを示唆する事実である.
また,MIROC5を用いた同実験においてENSOだけでなく近年の地球温暖化停滞が再現されたことから,共同研究として温暖化停滞は自然の変動の重ね合わせで起こる温度上昇の停滞であることが示され,国際誌に投稿される.

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

観測に基づくデータを用いた解析によって熱帯太平洋における海洋の季節内周期変動を抽出し,熱帯太平洋上の風および積雲活動に関する季節内周期の大気変動と海洋の変動を結びつけることができた.また,大気海洋結合モデルMIROC5を用いて過去の海洋場の再現を行うために観測される風応力によって制御するようモデルのソースコードを修正して実験を行うことで,高周波な大気擾乱がENSOに与える影響を抽出することができた.
西風イベントのような大気の高周波な擾乱がENSOの位相遷移を直接もたらすという結果はまだ得られていないものの,今後研究を進める上で重要な大気と海洋の相互作用に関する知見とモデルを修正する技術を得ることができたため,これからの研究の進展は十分に期待される.したがって,研究は順調に進展していると言える.
当初の予定とは異なるが,地球温暖化の停滞という非常に重要な気候学の問題の理解に貢献できたことも重要な成果である.その成果は国際誌に投稿される予定である.

Strategy for Future Research Activity

西風イベントがENSOの位相遷移をもたらす過程をより直接的に調査するために,大気海洋結合モデルMIROC5に観測された西風イベントおよび理想化された西風イベントを与える実験を行う.まず,2014年の1月から3月にかけて顕著な西風イベントが2度生じたこととエルニーニョ現象の発生が世界中の現業機関によって予測されていることから,MIROC5を用いた過去の再現実験を2度の西風イベントを含む2014年3月まで延長して,2014年4月の海洋場を再現し,複数の初期値を用いることでその後の予測実験を試みる.続いて,同じ実験から1月から3月に生じた西風イベントを両方,もしくは片方を取り除くことで,その予測実験結果に対して西風イベントが与える影響を特定する.
また,より一般的な西風イベントの影響を調査するために,摂動の小さな海洋場を初期状態を複数作成し,西部および中央熱帯太平洋に様々な時期や位置へ理想的な西風イベントを与えることでそれに対する応答の違いを示し,海洋を最も暖める西風イベントの条件,すなわちENSOの位相遷移をもたらしやすい西風イベントの特性を明らかにする.

  • Research Products

    (4 results)

All 2013

All Presentation (4 results)

  • [Presentation] 熱帯における不安定な対流域の東進メカニズム: GCMによるMJO再現性への示唆2013

    • Author(s)
      林未知也, 伊藤久徳
    • Organizer
      熱帯降水系研究会2013
    • Place of Presentation
      JAMSTEC横浜研究所,神奈川県
    • Year and Date
      2013-09-29 – 2013-09-29
  • [Presentation] 西風イベントがENSO位相遷移に与える影響: 異なる時間スケール間での大気海洋相互作用2013

    • Author(s)
      林未知也, 渡部雅浩
    • Organizer
      熱帯気象研究会2013
    • Place of Presentation
      琉球大学,沖縄県
    • Year and Date
      2013-08-22 – 2013-08-22
  • [Presentation] The mechanism of the eastward-propagation of unstable disturbances with convection in the tropics2013

    • Author(s)
      Hayashi M. and H. Itoh
    • Organizer
      Davos Atmosphere and Cryosphere Assembly DACA-13
    • Place of Presentation
      Davos, Switzerland
    • Year and Date
      2013-07-13 – 2013-07-13
  • [Presentation] 加熱の鉛直構造に依存した熱帯不安定擾乱の特性の再考2013

    • Author(s)
      林未知也, 伊藤久徳
    • Organizer
      日本気象学会2013年度春季大会
    • Place of Presentation
      国立オリンピック記念青少年総合センター,東京都
    • Year and Date
      2013-05-16 – 2013-05-16

URL: 

Published: 2016-06-01  

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