2013 Fiscal Year Annual Research Report
障害を受けた感覚モダリティーを補完する大脳皮質可塑性機構の多面的解析
Project/Area Number |
13J05381
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Research Institution | National Institute for Physiological Sciences |
Principal Investigator |
西尾 奈々 生理学研究所, 生体情報研究系, 特別研究員(PD)
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Keywords | 可塑性 / 大脳皮質 / 感覚モダリティー / 機能補完 |
Research Abstract |
本研究課題の目的は、固有の感覚入力を失った感覚野が、他の感覚モダリティの情報処理に参加して失われた機能を代償する際の神経回路メカニズムを明らかにすることである。2013年度は、本研究に適した感覚入力遮断モデルの検討と、実験条件の検討を行った。本研究では、分子生物学的手法と機能イメージングの適用が容易なマウス大脳皮質を研究対象とする。まず聾モデルとして、耳小骨除去マウスと外耳道閉鎖マウスを、幼若期に手術することにより作成し、いずれについても中程度以上の難聴を示すこと、耳小骨除去マウスについては術後経過が不良であることを確認した。また盲モデルマウスとしては、新生児期に眼球を摘出した眼球除去マウスを作成し、術後の経過が良好であることを確認した。また、発達早期から盲聾であると考えられるdeaf-5 rd二重変異体について、聴覚野と視覚野のマクロイメージングを行い、体性感覚刺激に対する反応性を検証したところ、麻酔深度が深い時には聴覚・視覚の両感覚野において反応性は見られなかったが、麻酔深度が浅い時には両感覚野で反応性が確認された。このことから、ある固有感覚領野について別の感覚刺激に対する応答を検証するには、深い麻酔状態は適さず、本研究には覚醒条件下におけるイメージングが望ましいと考えられた。また、覚醒マウスの脳イメージングには、側頭にあり側頭筋を除く必要のある聴覚野のイメージングより、頭上部にある視覚野のイメージングが適していることから、本研究には、盲モデルマウスの視覚野を研究対象とすることが適当であると考えられた。今後の研究の進展には、適切な感覚入力遮断モデルの選択が非常に重要であり、感覚補完の研究に適した感覚入力遮断モデルを見出し、大脳皮質の感覚反応を評価するのに適切な記録条件を設定した2013年度の研究は、初年度の成果として重要なものと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今後の研究の進展には、適切な感覚入力遮断モデルの選択が非常に重要であり、感覚補完の研究に適した感覚入力遮断モデルを見出し、大脳皮質の感覚反応を評価するのに適切な記録条件を設定した2013年度の研究は、初年度の成果として重要なものと考えられるため。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度に見出した、感覚補完の研究に適した感覚入力遮断モデルと適切な記録条件を用いて、学習行動課題を用いた残存機能の向上の評価と、固有の入力を失った領野細胞における、他の感覚入力に対する応答の検証を行う。まず聴覚機能について検証する予定であるが、機能向上の検出が難しい場合には、体性感覚機能についても検証し、向上がより顕著な感覚機能を以後の研究の実験対象とする。
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