2014 Fiscal Year Annual Research Report
障害を受けた感覚モダリティーを補完する大脳皮質可塑性機構の多面的解析
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13J05381
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Research Institution | National Institute for Physiological Sciences |
Principal Investigator |
西尾 奈々 生理学研究所, 生体情報研究系, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 可塑性 / 大脳皮質 / 感覚モダリティー / 機能補完 |
Outline of Annual Research Achievements |
大脳皮質の神経回路は、個体の生存環境に応じて可塑的に再編成される。例えば、視覚入力を失った視覚野は触覚や聴覚等の情報処理に参加し、それらの感覚機能を向上させることが示唆されている。本研究課題の目的は、固有の感覚入力を失った感覚野が、他の感覚モダリティの情報処理に参加して失われた機能を代償する際の神経回路メカニズムを明らかにすることである。本研究では、分子生物学的手法と機能イメージングの適用が容易なマウス大脳皮質視覚野を研究対象とする。2014年度は、盲モデルマウスの視覚野における聴覚応答細胞の検証を行った。 盲モデルマウスとしては、新生児期に眼球摘出を行ったマウスを用いた。眼球摘出マウスと健常マウスについて音暴露後に細胞活動マーカーの発現を検証した結果、視覚入力が遮断された一次視覚野の中で、特に後方で聴覚応答細胞が多くなることが示された。マウスの視覚野の前方はヒゲからの入力を受容する体性感覚野に隣接しており、後方は聴覚野と比較的近傍である。また、正常マウスの一次視覚野において、視覚野前方は視野の下方および中央側、つまりヒゲに近い領域に対応し、視覚野後方は視野の上方および側方に対応する(レチノトピーマップ)。本研究の結果は、一次視覚野というひとつの領野が、視覚入力が遮断されたときに場所によって異なる感覚情報処理に参加する可能性があることを示唆する。 現在は、in vivoイメージングを用いた視覚野における聴覚応答反応の取得と、聴覚機能向上を検討するための行動実験課題の立ち上げを行っているところである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の結果は、一次視覚野というひとつの領野が、視覚入力が遮断されたときに場所によって異なる感覚情報処理に参加する可能性を示唆する。レチノトピーマップの意味と対応付けると興味深い結果であり、中間成果として重要であると考えられるため。
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Strategy for Future Research Activity |
in vivoイメージングを用いて、視覚野細胞の聴覚応答性を解析する。ただし、一次視覚野後方は太い静脈に近接しており、血管像に遮られて必要な領域のイメージングが困難となる可能性も考えられる。その場合は、多点電極を用いた電気生理学的解析についても検討する。盲モデルマウスの視覚代償機能については、音源定位の能力について、行動実験課題を用いて解析を行う予定である。ただし、機能向上の検出が困難であった場合は、他の聴覚機能および体性感覚機能について解析し、向上がより顕著な感覚機能を以後の研究の実験対象とする。
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