2013 Fiscal Year Annual Research Report
第一原理分子動力学法を用いたクラスレート水和物内部の分子運動の解明
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13J05399
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
平塚 将起 慶應義塾大学, 理工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | クラスレート水和物 / 分子動力学 / 第一原理計算 / 振動スペクトル / 熱力学的安定性 |
Research Abstract |
本研究の目的は, クラスレート水和物を用いたエネルギー技術の高度化のために, ハロゲン分子やアルコール分子を包摂するハイドレートのゲスト-水分子間相互作用が, 構造の安定性に及ぼす影響を明らかにすることである. 本年度は当初の予定のとおり, フルオロカーボンが包摂されるクラスレート水和物について, 第一原理分子動力学法を行いケージ内部での分子の振る舞いを解析した. 特にフッ素原子の数によって相平衡条件が大きく変化する要因に着目して解析を行った. はじめに, 第一原理分子動力学計算において重要となる相関交換項の取り扱いや基底関数が結果に及ぼす影響を吟味した. これによって, 密度汎関数理論におけるファンデルワールス力の補正がケージ内部の分子の分布や振動スペクトルに及ぼす影響について定量的な知見が得られた. 続いてフルオロカーボン分子のクラスレート水和物内部での分布や運動の様子を第一原理分子動力学法から求め, フッ素原子の数によってそれらが大きく変化することを明らかにした. CH4やCF4分子がハイドレートに包摂されている場合には, ケージ内部でゲスト分子は偏りなく等方的に分布していた. 一方CH3F, CH2F2, CHF3といった分子の場合には, ケージの異方性に合わせゲスト分子の分布や運動の様子も変化し, ケージの形状に適合してハイドレートが安定化されるという結果が得られた. 一方で今回の計算ではフルオロカーボン分子と水分子との間に水素結合やハロゲン結合のような明らかな結合は観察されず, アルコールを包摂する分子とは異なる挙動が観察された. 実施計画の通り, ゲスト−水分子間の相互作用の指標となる振動スペクトルも計算し, ゲスト分子の振動数の変化を計算した. これによって格子の振動やポテンシャルが, メタンやフルオロカーボン分子の運動のみでなく, 分子内の振動にも大きく影響していることが明らかとなった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通りフルオロカーボンを包摂するクラスレート水和物について, 第一原理分子動力学計算を行い, ケージの安定性に対して分子の運動が及ぼす影響を調べることができた. また格子の振動やポテンシャルが振動スペクトルに及ぼす影響についても明らかにすることができた.
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Strategy for Future Research Activity |
当初の予定通り, エタノールやプロパノールのような異なるアルコール分子についても第一原理分子動力学計算を行い, ブタノールなどの異なるハイドレートと比較を行う. また臭素のような, フッ素以外のハロゲン原子を含む分子を包摂するクラスレート水和物についても第一原理分子動力学計算を行い, フルオロカーボン分子の場合と比較を行う. 必要に応じて自由エネルギー計算や, 古典分子動力学計算なども併用し, クラスレート水和物の安定性にクラスレート水和物内部での分子の運動が及ぼす影響を明らかにしていく.
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Research Products
(5 results)