Ｘ線偏光観測で探る超新星残骸における粒子加速機構

2014 Fiscal Year Annual Research Report

• Project/Area Number: 13J05448
• Research Institution: Tokyo University of Science
• Principal Investigator: 武内 陽子 東京理科大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
• Project Period (FY): 2013-04-01 – 2016-03-31
• Keywords: X線偏光観測 / 超新星残骸 / 粒子加速 / ガス検出器 / 国際情報交換 / アメリカ

Outline of Annual Research Achievements

研究課題を達成するためにも、我々の研究チームは長年望まれている天体からのX線偏光観測を実現させるべく、NASAと共同で開発しているX線偏光計を搭載した衛星計画を推進している。私は26年度では、その衛星搭載用のX線偏光計と同等のものを日本でも製作・性能調査を行い、性能調査で得られた結果を衛星に載せるX線偏光計の詳細設計にフィードバックすることで、衛星実験の成功に貢献することを目指した。主な研究実績は以下のとおりである。
1.偏光計の製作・基本動作の確認
PRAXyS衛星計画に向け、我々は早急に衛星搭載用のX線偏光計の性能調査をし、偏光計の詳細設計を決定する必要がある。そのためには現在NASAにしかない衛星搭載用のX線偏光計と同性能のものを日本で製作し、日米で並行して偏光計の性能調査を行わなければならない。私は、25年度に製作したNASA側ではできない性能調査に対応した独自のX線偏光計の基礎評価試験を実施し、必要最低限の動作を確認した。また26年12月に理化学研究所の放射光施設SPring-8で、高偏光度のX線ビームを用いてこの偏光計の性能評価試験をし、結果、NASAが所有しているフライト品相当の偏光計と同等の性能がある事が確認された。

2. ガス電子増幅フォイルの性能評価
我々の偏光計のコアデバイスであるガス電子増幅フォイルは、高い増幅率、エネルギー応答性、電子増幅の場所依存性が少ないのが特徴であるが、定量的に調べられていなかった。私はこれらの項目について実際のフライト品と同等の物を使って上記の項目を詳細に調べ、6月末にあった国際会議SPIEでポスター発表およびproceedingsとしてまとめた。また、この調査でガス電子増幅フォイルの場所依存性の原因ができたので、今後の開発へフィードバックされることが決定した。

Current Status of Research Progress

1: Research has progressed more than it was originally planned.

Reason

昨年度の目標であった独自の偏光計の基礎性能の確認の他に、当初予定していなかった大型放射光施設SPring-8を利用した高偏光X線を使った偏光に対する性能評価試験ができた。そして、その結果からNASAが所有しているフライト品相当の偏光計と同等の性能がある事が確認できた。
また、偏光計の重要なデバイスであるガス電子増幅フォイルの性能評価を詳細に調べ、国内会議をはじめ、国際会議SPIEでのポスター発表とproceedingとして成果をまとめることができた。この結果は多くの研究者の興味を引き、特に欧州の研究者とのコネクションを作ることに役立った。

上記の様に、国内・国際で活発に研究活動を行い、当初の予定以上の結果をだした。

Strategy for Future Research Activity

研究課題としてあげていた超新星残骸からのX線偏光を観測することは、衛星プロジェクトが一旦中止になってしまったため、残念ながら私が在学中には最終目標を達成することができなくなった。超新星残骸の粒子加速の機構解明をするためにも、超新星残骸の周辺環境や爆発タイプを知る必要がある。そのため、私は今後の研究として既存のX線天文衛星 すざく衛星に搭載されている高分解能のX線観測装置で観測された全ての超新星残骸の系統解析を行うことで、その周辺環境や爆発タイプに迫る。超新星爆発が起きた時、元の星の元素が周囲に飛び散り、衝撃波で高温に熱せられる。この時、元素ごとに放つ輝線は、周辺環境や、爆発前の親星の情報を持っている。それらの輝線を一つずつ詳細に調べ、さらに天体ごとで違いをまとめる事で系統的に周辺環境や爆発タイプなどを調査をする。

Research Products

• [Journal Article] Properties of the flight model gas electron multiplier for the GEMS mission (2014)
  • Author(s): Yoko Takeuchi, Takao Kitaguchi, Asami Hayato, Toru Tamagawa, Wataru Iwakiri, Fumi Asami, Akifumi Yoshikawa, Kenta Kaneko, Teruaki Enoto, J. Kevin Black, Joanne E. Hill, Keith M. Jahoda
  • Journal Title: Proceedings of SPIE Volume: 9144 Pages: 91444N
• [Journal Article] Performance verification of the gravity and extreme magnetism small explorer (GEMS) X-ray polarimeter (2014)
  • Author(s): Teruaki Enoto, J. Kevin Black, Takao Kitaguchi, Asami Hayato, Joanne E. Hill, Keith M. Jahoda, Toru Tamagawa, Kenta Kaneko, Yoko Takeuchi, Akifumi Yoshikawa, Hannah R. Marlowe, Scott Griffiths, Philip E. Kaaret, David Kenward, Syed Khalid
  • Journal Title: Proceedings of SPIE Volume: 9144 Pages: 91444M
• [Journal Article] Monte-Carlo estimation of the inflight performance of the GEMS satellite x-ray polarimeter (2014)
  • Author(s): Takao Kitaguchi, Toru Tamagawa, Asami Hayato, Teruaki Enoto, Akifumi Yoshikawa, Kenta Kaneko, Yoko Takeuchi, J. Kevin Black, Joanne E. Hill, Keith M. Jahoda, John F. Krizmanic, Steven J. Sturner, Scott Griffiths, Philip E. Kaaret, Hannah R. Marlowe
  • Journal Title: Proceedings of SPIE Volume: 9144 Pages: 91444L
• [Presentation] 宇宙観測を目的としたTPC型X線偏光計の性能評価試験 (2015)
  • Author(s): 早藤 麻美, 北口 貴雄, 岩切 渉, 玉川 徹, 武内 陽子, 窪田 恵, 西田 和樹, 榎戸 輝揚
  • Organizer: 日本物理学会
  • Place of Presentation: 早稲田大学
  • Year and Date: 2015-03-21 – 2015-03-24
• [Presentation] PRAXYS衛星搭載X線偏光計のシンクロトロン放射光を用いた性能評価 (2015)
  • Author(s): 岩切渉，北口貴雄，早藤麻美，玉川徹，武内陽子，窪田恵，西田和樹，榎戸輝揚，Keith M. Jahoda，Joanne E. Hill，J. Kevin Black
  • Organizer: 日本物理学会
  • Place of Presentation: 早稲田大学
  • Year and Date: 2015-03-21 – 2015-03-24
• [Presentation] PRAXyS衛星搭載に向けた光電効果型ガス偏光計の性能評価 (2015)
  • Author(s): 窪田恵、武内陽子、西田和樹、吉川瑛文、金子健太、榎戸輝揚、 早藤麻美、北口貴雄、岩切渉、玉川徹、Keith M. Jahoda、Joanne E. Hill、J. Kevin Black
  • Organizer: 日本天文学会
  • Place of Presentation: 大阪大学
  • Year and Date: 2015-03-18 – 2015-03-21
• [Presentation] X 線偏光観測衛星 PRAXyS (2015)
  • Author(s): 玉川 徹, 早藤麻美, 北口貴雄, 榎戸輝揚, 岩切 渉, 吉川瑛文, 武内陽子, 窪田 恵, 西田和樹, 田原 譲, 幅 良統, 林田 清, 水野恒史, Keith Jahoda, Joanne Hill, ほか PRAXyS 衛星チーム
  • Organizer: 日本天文学会
  • Place of Presentation: 大阪大学
  • Year and Date: 2015-03-18 – 2015-03-21
• [Presentation] SPring-8 によるマイクロパターンガス偏光計の詳細な性能評価 (2015)
  • Author(s): 北口 貴雄, 玉川 徹, 早藤 麻美, 岩切 渉, 窪田 恵, 西田 和樹, 武内 陽子, 榎戸 輝揚, 武井 大, 高山 裕貴
  • Organizer: 日本天文学会
  • Place of Presentation: 大阪大学
  • Year and Date: 2015-03-18 – 2015-03-21
• [Presentation] X線の直線偏光・分光・到達時間を測定できるマイクロパターンガス検出器の開発 (2014)
  • Author(s): 北口 貴雄, 玉川 徹, 早藤 麻美, 榎戸 輝揚, 岩切 渉, 吉川 瑛文, 金子 健太, 武内 陽子, 窪田 恵, 西田 和樹
  • Organizer: 日本物理学会
  • Place of Presentation: 佐賀大学
  • Year and Date: 2014-09-18 – 2014-09-21
• [Presentation] 光電子追跡型X線偏光計の製作および基礎性能評価 (2014)
  • Author(s): 武内 陽子, 玉川徹, 北口貴雄, 早藤麻美, 榎戸輝揚, 岩切渉(理研), 吉川瑛文, 金子健太, 窪田恵, 西田和樹
  • Organizer: 日本天文学会
  • Place of Presentation: 山形大学
  • Year and Date: 2014-09-11 – 2014-09-13
• [Presentation] 小型かつ変調型のX線発生装置Modulated X-ray Source(MXS)の製作と性能評価 (2014)
  • Author(s): 岩切渉、早藤麻美、武内陽子、玉川徹、北口貴雄、榎戸輝揚、 吉川瑛文、金子健太、窪田恵、西田和樹 (理研/東京理科大学)、Keith Gendreau
  • Organizer: 日本天文学会
  • Place of Presentation: 山形大学
  • Year and Date: 2014-09-11 – 2014-09-13
• [Presentation] Properties of the flight model gas electron multiplier for the GEMS mission (2014)
  • Author(s): Yoko Takeuchi, Takao Kitaguchi, Asami Hayato, Toru Tamagawa, Wataru Iwakiri, Fumi Asami, Akifumi Yoshikawa, Kenta Kaneko, Teruaki Enoto, J. Kevin Black, Joanne E. Hill, Keith M. Jahoda
  • Organizer: Space Telescopes and Instrumentation 2014: Ultraviolet to Gamma Ray
  • Place of Presentation: Montreal, Canada
  • Year and Date: 2014-06-24
• [Presentation] Performance verification of the gravity and extreme magnetism small explorer (GEMS) X-ray polarimeter (2014)
  • Author(s): Teruaki Enoto, J. Kevin Black, Takao Kitaguchi, Asami Hayato, Joanne E. Hill, Keith M. Jahoda, Toru Tamagawa, Kenta Kaneko, Yoko Takeuchi, Akifumi Yoshikawa, Hannah R. Marlowe, Scott Griffiths, Philip E. Kaaret, David Kenward, Syed Khalid
  • Organizer: Space Telescopes and Instrumentation 2014: Ultraviolet to Gamma Ray
  • Place of Presentation: Montreal, Canada
  • Year and Date: 2014-06-24
• [Presentation] Monte-Carlo estimation of the inflight performance of the GEMS satellite x-ray polarimeter (2014)
  • Author(s): Takao Kitaguchi, Toru Tamagawa, Asami Hayato, Teruaki Enoto, Akifumi Yoshikawa, Kenta Kaneko, Yoko Takeuchi, J. Kevin Black, Joanne E. Hill, Keith M. Jahoda, John F. Krizmanic, Steven J. Sturner, Scott Griffiths, Philip E. Kaaret, Hannah R. Marlowe
  • Organizer: Space Telescopes and Instrumentation 2014: Ultraviolet to Gamma Ray
  • Place of Presentation: Montreal, Canada
  • Year and Date: 2014-06-24