2013 Fiscal Year Annual Research Report
ミシェル・フーコーと「プシュケーをめぐる諸科学」の認識論
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13J05455
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
柵瀬 宏平 東京大学, 大学院総合文化研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | フーコー / 心理学主義 / カント / ハイデガー / 精神分析 / ラカン / ハムレット / 欲望 |
Research Abstract |
「ミシェル・フーコーと「プシュケーをめぐる諸科学」の認識論」に関する研究を進めるべく、今年度研究員は、1960年代におけるフーコーの思索の中核をなす「カントと心理学主義(人間学主義)」と「精神分析と有限性の問題」という二つの研究テーマについて、集中的に検討を行った。 「カントと心理学主義(人間学主義)」という第一の研究テーマに関して、研究員は19世紀後半から20世紀後半にかけてドイツにおいてなされたカント解釈、とりわけカントの認識論を心的能力論として心理学的に解釈しようとする潮流に抗して、反心理学主義的な立場からカント読解を展開したヘルマン・コーエンの『カントの経験理論』(初版1871年、第二版1885年)およびマルティン・ハイデガーの『カントと形而上学の問題』(1929年)がフーコーに与えた影響を考慮しつつ、フーコーが『カントの人間学』(1961年)および『言葉と物』(1965年)において展開したカント哲学と心理学主義(人間学主義)の関わりをめぐる議論の哲学的意義について明らかにすることを目指した。 研究員が第二に取り組んだのは、「精神分析と有限性の問題」という研究テーマである。『言葉と物』においてフーコーは、人間学主義からの脱却を可能にする「反人間科学」として精神分析を積極的に評価している。フーコーによる精神分析理解の射程を検討するために、精神分析について論じる際にフーコーが参照したジャック・ラカンの精神分析、とりわけその欲望理論について考察した。研究員はラカンが1959年のセミネール『欲望とその解釈』において展開した『ハムレット』分析を詳細に読解することで、欲望と有限性の密接な関わりについて明らかにした。こうした研究成果について研究員は、ボルドー・モンテーニュ大学においてKim Sang Ong-Van-Cung教授が主催する連続セミナー「Culture et Violence」においてフランス語で口頭発表を行うとともに、「欲望の悲劇 : ジャック・ラカンによる『ハムレット』読解をめぐって」と題した日本語論文を「I. R. S. ―ジャック・ラカン研究―」に発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究を通じて1960年代のフーコーの哲学的営為において心理学および精神分析が持つ意義が明らかになったが、これは「フーコーと「プシュケーをめぐる諸科学」の認識論」という研究課題を進める上できわめて重要な成果であると思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
構造主義という思想的潮流が孕む哲学的意義について検討しながら、1960年代のフーコーの思想形成においてフロイト=ラカン精神分析がいかなる役割を果たしたのかを明らかにする。また『狂気の歴史』(1961年)を集中的に読解することで、昨年度本格的に検討することができなかったフーコーと精神医学の関わりについても明確にすることを目指す。
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Research Products
(2 results)