Research Abstract |
本研究では, 浮遊性有孔虫と藻類の共生関係(光共生)の量的な評価, および化石にも適用可能な生態識別指標の確立を目指し, 現生浮遊性有孔虫の飼育実験と殻体同位体比組成分析を行っている. 平成25年度は, まず飼育に適した有孔虫種を選定するため, プランクトンネットにより採取した浮遊性有孔虫12種について継続飼育を試み, 飼育環境下でよく成長する種を選定した. また, 有孔虫の共生藻密度(クロロフィル濃度)を生きたまま定量すべく, 高速フラッシュ励起蛍光法(FRRF)を用いてクロロフィル蛍光を測定するプロトコルの検証も行った. この蛍光測定法を浮遊性有孔虫に対して適用するのは本研究が初めてであるが, 検証の結果, 測定されるクロロフィル蛍光から有孔虫1個体あたりのクロロフィル濃度を見積もることができた. またFRRF測定を多くの有孔虫種に対して実施し, その関係性を確認するため, 海洋地球研究船「みらい」によるMR13-04航海に参加し, 有孔虫のサンプリングおよび船上でのFRRF測定を行った, その結果, 上述のクロロフィル蛍光とクロロフィル濃度の関係性が浮遊性有孔虫一般に適用可能であることが明らかとなり, またこれまで共生関係が不明であった種の光共生生態が新たに確認されるなど, 一定の成果が得られた. 12月には, 有孔虫個体の成長に伴う, 細胞内の共生藻の増殖・減少過程を明らかにするため, G. sacculiferとG. siphoniferaを用いた継続飼育実験を実施し, FRRF測定を飼育期間中, 全個体に対し継続的に行った. FRRF測定の結果, 個体の成長に伴う明瞭なクロロフィル蛍光の増加と, リプロダクション(遊走子・放出)直前の急激な減少が確認され, 共生藻の増殖と, その後の有孔虫による消化というプロセスが明らかとなった. また種間では光合成の特性(光合成活性, 光の利用効率など)に違いが見られ, 各種が有する共生藻の種類によって異なる特性を示すことが明らかとなった.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
飼育実験, およびクロロフィル蛍光測定による光合成の定量についてはおおむね順調に進んでいるうえ, これらにより, 浮遊性有孔虫の光共生について新たな知見も得られている. 当初, 初年度のうちに着手する予定の殻体の同位体分析は, 分析機器を所有する研究室の移転などがあり未実施であるが, 26年度中に開始できる予定である.
|
Strategy for Future Research Activity |
飼育実験に関しては, 26年度6月に航海を実施し, 黒潮流路でサンプルを入手する予定である. ただし, 航海でのサンプリングは, 現場海況の関係等で思うようにサンプルが得られない可能性もあるため, その場合は25年度と同様に瀬底島の実験施設にて, サンプリングおよび飼育実験を実施する予定である. また25年度に着手できなかった同位体比分析は, 26年度前半には開始する予定である. 25年度の飼育試料の処理はおおむね済んでおり, また分析機器を所有する茨城高専にはすでに使用の許諾を得ているので, 本件は予定通り遂行可能であると考えている.
|