2014 Fiscal Year Annual Research Report
超高速超音波イメージングによる心臓内血流動態の高精度・高空間分解能計測の研究
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13J05479
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
高橋 広樹 東北大学, 医工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 経胸壁心臓超音波計測 / 血流速度ベクトル推定 / 高フレームレート / 低速血流 |
Outline of Annual Research Achievements |
心臓のポンプ効率と心内腔の血流パターンは密接に関係する.本研究の目的は,超音波を用いた秒間数千枚の撮像を可能とする高速イメージング法により心内腔の1 m/sを超える高速かつ複雑な血流の可視化を達成することである.血液の流れる領域を同定するために周囲を囲む心筋の可視化が必要であるが,指向性の低い拡散超音波を送信するため心筋の描出能が大きく劣化する.拡散範囲を狭くすることで指向性を向上させることが可能であるが,心内腔を走査するために多数回の送信が必要となるため,フレームレート(時間分解能)が低下する.そこで,心内腔を描出するために必要な超音波の拡散範囲について検討を行ったところ,拡散範囲を最小限に抑えることで,心筋の描出により血液の流れる領域を同定しながら秒間6000枚を超える血流の高フレームレート計測が達成できることが分かった. 血流パターンの定量評価のために心内腔血流の速度ベクトルの計測は有用である.しかし,管状流路に流れる疑似血液を対象とした基礎実験結果から,速度ベクトル推定の方向推定誤差が18.2%と大きいことが分かった.血球エコーのフレーム間の2次元相関関数の時間平均により推定精度の改善が期待されるが,時間分解能は劣化する.そこで,速度ベクトル計測の精度改善に必要な時間平均幅を評価した.約2 msと短い平均幅であっても,前述の誤差を18.2%から6.7%に大きく改善できることが分かった. 心内腔の複雑な血流を理解するために,流線の描出は有効である.精度を改善された速度ベクトル推定法により得られる血流速度場に基づき,ヒト心臓内の血流の流線を推定する手法について検討した.1階微分方程式で表される流線を推定するために,ルンゲ・クッタ法に基づいて近似解を算出した.超音波断層像の面外方向の速度は考慮しない疑似的な流線ではあるが,心内腔へ流入する血流の流線の可視化を達成した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は,超音波を用いてヒト心臓内の1 m/sを超える高速かつ複雑な血流の可視化を達成することである.目的を達成するために,秒間数千枚の撮像を可能とする高速超音波イメージングを行うことで,血液の真の流れを可視化する.さらに,血球からのエコーの動きに基づき心内腔血流の速度ベクトル推定法を開発する. 超音波の送信音場について検討を行った結果,秒間6000枚の高速超音波イメージングが可能であることを明らかにした.管状流路内を定常流で流れる疑似血液を対象とした実験において,検討した高速イメージングを用いることで平均流速0.6 m/sの疑似血液からのエコーの動きを高い相関で(つまり,連続的に)計測可能であることが分かった.心臓ポンプ機能と密接に関係する重要な心内腔血流パターンとして血液流入時における渦状の血流が知られているが,提案手法を用いることで,ヒト心臓の心内腔における血球エコーの渦状の動きの描出を達成した. 定量情報を提供するために,血流の速度ベクトル分布の可視化は有用である.超音波の波長500ミクロン程度に対し長径約8ミクロンの血球からのエコーは微弱であり,心筋などの組織からのエコーに比べて信号対雑音比が圧倒的に低いため,血球エコーの動きを用いた血流速度ベクトル推定法の精度も低い.このような状況下で血流速度ベクトルを安定的に推定するために,血球エコーのフレーム間の2次元相関関数を約2 msの短い時間幅で平均化する手法を提案した.提案手法を用いることで,心内腔における血液流入時の渦状の流れを血流速度ベクトル分布により描出することを達成した.この成果により,本手法により心内腔の渦状血流を定量的に解析する可能性が示された. 上述のように目的達成のための成果が得られている点から,順調に進展していると判断する.
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Strategy for Future Research Activity |
ヒト心臓を対象とした実験を通して,本手法により得られた血流速度ベクトルの時間・空間的な連続性が低いことが分かっている.研究目的の達成のために,血流速度ベクトルの推定精度のさらなる改善が必要である.数mm3内の超音波焦域において長径数ミクロンである血球が不均一な速度で運動することによって,エコー信号波形のフレーム間の相関が低下していることが原因であると考えられる.また,エコーのフレーム間の相関を高精度に推定するためには,エコー信号分布の空間振動数が高いことが望ましい.しかし,本研究では,高速イメージングを実現するために各素子からの送信波面が揃った拡散超音波ビームが送信される.そのため,送信超音波の波面伝搬方向と直交する方向のエコー信号の空間振動数が低い. このような状況下で血流速度ベクトルの推定精度を改善するために,超音波ビーム形成のための信号処理法について検討を行う.異なる方向を向いた波面を形成することにより各波面で得られるエコー間の干渉周期が短くなるため,合成後のエコー信号は空間的に振動する.このように,信号処理によって血球からのエコー信号を空間的に振動するように合成することで,速度ベクトルの推定精度を向上させる.本提案手法はこれまでの研究と同様にエコーのフレーム間の相関関数を用いるため,相関関数の数 msの時間平均化により速度ベクトル推定精度の一層の改善が見込まれる.
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Research Products
(8 results)