2013 Fiscal Year Annual Research Report
scabronineAの効率的不斉全合成と構造活性相関への展開
Project/Area Number |
13J05515
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
小早川 優 早稲田大学, 理工学研究科, 特別研究員DC2
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Keywords | 不斉全合成 / Diels-Alder反応 / NGF / 神経成長因子 / 構造活性相関 |
Research Abstract |
本研究は、担糸菌ケロウジから抽出された天然物(-)-scabronine Aの世界初の不斉全合成と、その合成研究の過程で得られるscabronine誘導体の構造活性相関研究を目的とした。本天然物の有する神経成長因子の合成促進活性は、現代の医学では根本的治療の困難なアルツハイマー病の新規治療薬となり得る可能性を秘めている。しかしながら、これまでに(-)-scabronine Aのみならず、その類縁体をも効率的に合成する方法はなかった。そこで筆者は、次の2つの反応と鍵する効率的な合成を計画し、これによって研究課題の一つである(-)-scabronine Aの世界初の不斉全合成を達成した。その一つ目が、芳香族化合物の酸化的脱芳香族化/逆電子要請型Diels-Alder反応(oxidative dearomatization/inverse-electron-demand Diels-Alder (IEDDA) cascade)であり、二つ目がoxa-Michael付加反応を起点とした連続反応(oxa-Michael cascade)で、本連続反応によって7員環上に存在する連続不斉中心と架橋アセタール環構造を一挙に構築し、(-)-scabronine Aの初の不斉全合成を27工程、総収率10%で達成した。また、本合成はscabronine類の予想される生合成経路を模倣した方法であるため、その他の類縁体、すなわちscabronine B, C, D, G、episcabronine Aの不斉全合成も合わせて達成することができた。 本合成研究によって天然物以外のscabronine類縁体を30以上合成することに成功した。そこで、本研究によって合成したいくつかの天然物と天然物以外の類縁体を用いた構造活性相関研究を行った。その結果、活性発現に必要な部分構造の推測をすることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究の一つ目の目的であるscabronine Aの世界初の不斉全合成とその類縁体の合成、そして二つ目の目的である合成した化合物を用いた神経成長因子の合成促進活性試験を計画通りに行うことができた。さらにその結果から、強力な生物活性の発現に必要な部分構造の推定をすることができたため、計画以上の達成度であると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題の当初の目的はおおむね達成できたと思われる。そこで、今後の推進方策にっいては、合成した化合物を用いたさらなる構造活性相関研究の展開が考えられる。具体的には、①さらに強力な神経成長因子の合成促進活性を有するscabronine類の合成や、②scabronine類を標識できる化合物に誘導し、本化合物が結合する結合サイトの特定などが考えられる。さらに、③得られた構造活性相関研究の知見から、複雑なscabronine類の構造をよりドラッグライクに簡素化することも今後の取り組むべき計画として考えられる。
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Research Products
(3 results)