2014 Fiscal Year Annual Research Report
マッチング理論による日本の制度改革:望ましい研修医割り当て方式
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13J05523
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
近藤 光 大阪大学, 経済学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | マッチング / メカニズムデザイン |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度行った1つ目の研究は、初期保有がなく、確率的配分ルールを用いた片側マッチング理論において、新たな公平性の概念を導入した研究である。確率的概念を用いた場合、ある種の効率性・公平性・耐戦略性を満たすルールが存在しない、ということが既に知られているが、私は、既存文献にて用いられている公平性の概念を弱めた、”Equal treatment of equals at top two”という概念を導入し、結果として、このような非常に弱い公平性の概念を用いても、それと効率性・耐戦略性とは両立しない、ということを示した。現在、この概念をさらに弱め、何らかの配分ルールが存在しないかどうか、引き続き調べている。 本年度の研究の2つ目は、各参加者が単峰的な選好を持つような状況における片側マッチング理論の研究である。例として、医師のアポイントメントを再配分するという状況を考える。医師にアポイントメントをとる場合、最初は早いものから順にタイムスロットを埋めていくことが多い。しかし、患者の都合が悪くなり、予定を変更したい、ということがしばしば起こりうる。このような状況において、患者は「できるだけ早い方が望ましい」「できるだけ遅い方が望ましい」「11時が一番望ましい」など、何らかの時間にピークを持つ、ということはしばしば起こりうる。このような状況において、我々は、効率性・耐戦略性・個人合理性・羨望保持性という4つの望ましい性質を満たす、”Ants rule”という再配分ルールを得た。また、財および参加者の数が4人までの際には、効率性・耐戦略性・個人合理性・羨望保持性を満たす配分ルールはAnts ruleのみである、という特徴づけを行った。現在、財および参加者の数が5以上の際の特徴づけについて、引き続き分析を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画とは若干が異なる部分があるものの、研究はおおむね順調に進展している。現在、片側マッチング理論に関する未公刊の研究を3つ進めており、1つ目の研究については既に論文が完成し、現在"Mathematical Social Sciences"という雑誌に投稿中である。既に改訂要求も受けており、改訂後、再投稿も完了している。その他、片側マッチング理論に関する理論的・応用的な研究を進めており、これらはまだ分析が完了していないが、どちらも一定の成果はあがっており、近いうちに論文として完成させられると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
2015年度は、進行中の2つの片側マッチング理論に関する研究の完成を急ぐとともに、国内外の様々な研究者たちとの交流によって研究内容をブラッシュアップする。確率的概念を用いた片側マッチング理論に関する研究においては、具体的に何らかの配分ルールが存在するレベルにまで公平性の概念を弱め、可能であればそのルールの特徴づけを、一般のn人のケースにて行う。単峰的選好下における片側マッチング理論の研究においては、現在進めている特徴づけを、一般のn人のケースにて行う。また、"Kemeny distance"と呼ばれる概念を用いて、"Ants rule"に関する別の特徴づけも行う。 得られた結果を国内外の学会にて発表し、可能であれば2015年度中に論文としてまとめ、経済学の専門雑誌へと投稿する。
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Research Products
(5 results)