2014 Fiscal Year Annual Research Report
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13J05561
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
蛭子 はるか 東京大学, 医学部附属病院, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 脳・神経 / 神経科学 / 神経発生 |
Outline of Annual Research Achievements |
脳神経系の細胞構築には、大脳皮質に代表される「層構造」と脳深部に存在する「神経核構造」の2つがあり、脳神経系の形成メカニズムの統合的理解にはこの両者の理解が必須である。従来、大脳皮質などを用いて層構造の形成メカニズムは集中的に解析されてきたが、神経核構造の形成メカニズムは不明な点が多かった。そこで、申請者は神経核構造に着目し、マウス視床をモデルとして神経核のパターン形成の分子メカニズムを解析している。具体的にはこれまでに、予定視床領域で転写因子Foxp2の発現量が前後軸方向に勾配を持つこと、また機能不全型のFoxp2を発現するFoxp2(R552H)ノックインマウスを用いて、Foxp2の発現依存的に予定視床領域は後外側視床亜核群へと分化すること、即ちFoxp2が視床パターン形成を制御することを示してきた。また、Foxp2(R552H)ノックインマウスの予定視床領域で軸索ガイダンス分子であるEphA7, EphA4の遺伝子発現も抑制されていた。このことは、Foxp2が視床皮質軸索の投射制御も行っている可能性を提示している。そこで、平成26年度は、Foxp2による軸索投射制御についての研究を進めた。具体的には、Foxp2(R552H)ノックインマウスで視床皮質軸索投射が変化しているか検討するために、生後7日齢のFoxp2(R552H)ノックインマウスの前頭前野に神経軸索トレーサーであるDiIを注入した。その結果、逆行性にラベルされたDiI陽性細胞の存在領域が視床で拡大していた。この結果は、Foxp2は視床細胞の投射先の制御も行うことを示唆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度で、視床パターン形成においてFoxp2が視床皮質軸索投射も制御していることを新規に見出した。この一年で、視床パターン形成におけるFoxp2の役割への理解は確実に深まっており、論文として投稿準備中である。
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Strategy for Future Research Activity |
従来はおもにFoxp2の必要性について検討を行ってきたので、今後は子宮内電気穿孔法を用いて視床パターン形成におけるFoxp2の十分性と視床自律性を検討する。さらに、Foxp2(R552H)ノックインマウス野生型と変異型の遺伝子発現を比較し、Foxp2の下流に位置する分子制御メカニズムの解明を行う。具体的には、DNA chipを用いて視床パターン形成時期での視床における遺伝子発現を比較し、変異型で発現変化があった遺伝子群の中から分化運命を制御しうる転写因子に絞って解析する。
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