2013 Fiscal Year Annual Research Report
シリコン量子ドットと腹腔鏡を用いた腹膜播種の新規蛍光診断/治療法の一体化開発
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13J05621
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
太田 誠一 東京大学, 大学院医学系研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | シリコン / 量子ドット / ヒアルロン酸 / 胃がん / 腹膜播種 / 蛍光診断 / DDS / 腹腔鏡 |
Research Abstract |
今年度は、まずSi-QDの封入に用いるHAナノゲルの作製手法の確立と、白金系の抗がん剤であるシスプラチン(CDDP)を封入した際の薬物キャリアとしての機能評価を行った。HAナノゲルは、HAに金属との結合性の高いキレート配位子を修飾し、これをCDDPと混合することで作製した。HAに修飾されたキレート配位子とCDDP中の白金とが配位結合を形成することでHAの分子内が架橋され、ナノゲルが形成される。これにより、CDDPの担持とナノゲルの作製を1ステップで行うことが可能となった。 作製したHAナノゲルからのCDDPの放出挙動を検討した結果、中性条件では一週間後でも40%程度のCDDPがナノゲル内に残留し続けるのに対し、酸性条件(pH 4~5)では数時間程度のオーダーで速やかにCDDPが放出されることが確認された。これは、配位子の金属キレート能が酸性条件で低下すること起因する。ナノ粒子が細胞に取り込まれる際、周囲(エンドソーム内)のpHは5程度まで下がることが知られている。このため、HAナノゲルは細胞に取り込まれた後にのみ選択的にCDDPを放出することが期待される。 さらに、胃がん細胞株(MKN45-P)と正常中皮細胞株(Met 5A)を用いて、HAナノゲルのがん細胞選択性をin vitroで検討した。その結果、HAナノゲルは中皮細胞よりも胃がん細胞によってより多く取り込まれ、その結果胃がん細胞に対して選択的な毒性を示すことが確認された。上述のHAとCD44との特異的な結合が、この選択性に寄与しているのだと考えられる。 マウス腹膜播種モデルを用いたin vivoでの検討においても、HAナノゲルを使用することで播種数の明確な減少が認められ、薬物キャリアとしての有効性が確認された。今後、これにSiナノ粒子を封入することで、蛍光による診断と薬物送達による治療の一体化が可能になると期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
HAナノゲルが当初の計画通りにがん細胞への標的性を示し、抗がん剤の担持と細胞内での選択的な放出も可能となった。今後、Siナノ粒子を封入することで腹膜播種の診断・治療につながっていくと期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
HAナノゲルにSi量子ドットを封入し、蛍光による診断と薬物送達による治療を一体化したキャリアを創製する。さらに、このナノゲルの腹腔内での動態を調べ、数理モデルなどによって詳細な検討を行うことで、動態の理解と材料設計による最適化を行う。これらの検討を通して、腹腔鏡を用いた診断・治療の一体化プロセスの確立を目指す。
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Research Products
(6 results)