2014 Fiscal Year Annual Research Report
シリコン量子ドットと腹腔鏡を用いた腹膜播種の新規蛍光診断/治療法の一体化開発
Project/Area Number |
13J05621
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
太田 誠一 東京大学, 医学系研究科, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | シリコン / 量子ドット / ヒアルロン酸 / ナノゲル / 胃がん / 腹膜播種 / 蛍光診断 / ドラッグデリバリー |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、抗がん剤が内包されたシリコン量子ドット(Si-QD)の凝集体を作製し、その薬物キャリアとしての機能評価を行った。この複合体は、中性下では100 nm程度の凝集体を形成するが、酸性下では粒子表面に修飾されたアミンの静電反発によって分散し、薬物を放出するように設計されている。細胞株を用いたin vitro試験により、このSi-QD凝集体がエンドサイトーシスによって細胞に取り込まれ、その後のpH低下に応答して薬物を放出することが示された。このSi-QD凝集体は同時に、細胞内の蛍光マーカーとして機能することも確認されている。これらの結果により、Si-QDが蛍光による診断と薬物送達による治療を同時に行うための材料として有用であることが示された。 上記Si-QD凝集体はがんへの標的性を有していないが、胃がん腹膜播種の診断/治療に適用するためには、粒子が播種巣によって選択的に取り込まれる必要がある。このために、本研究ではがん細胞に過剰に発現しているCD44と特異的に結合する性質を持つヒアルロン酸(HA)を、Si-QD、抗がん剤と複合体化することを予定している。前年度までの検討により、我々は抗がん剤であるシスプラチン(CDDP)を封入したHAの微粒子(ナノゲル)の作製に成功し、これがマウス腹膜播種モデルの播種数を効果的に減少させることを確認した。しかし一方で、サイズの大きな播種については、ナノゲルが腫瘍内部まで浸透することができず、明確な効果が見られなかった。このため今年度は、胃がん細胞株の細胞塊(スフェロイド)を三次元培養し、これをモデル腫瘍組織として使用することで、HAナノゲルの組織浸透性の評価系を構築した。その結果、ナノゲルの組織浸透の過程を、経時的に観察することに成功した。今後この評価系を使用し、組織浸透性の向上のための、HAナノゲルの材料設計の改良を行っていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Si-QDによる蛍光イメージングと薬物送達の一体化が達成され、さらにHAナノゲルについても、課題であった腫瘍浸透性を向上させるための評価系が、今年度の検討により整った。今後材料設計の最適化によりHAナノゲルの腫瘍浸透性を向上し、これにSi-QDと抗がん剤を封入することで、本課題の目的である胃がん腹膜播種の診断/治療の一体化へとつながっていくと期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、今年度構築した評価系を用いて、HAナノゲルの腫瘍浸透性の向上を行う。さらに、このHAナノゲル中へのSi-QDと抗がん剤の封入を行う。作製したSi-QD封入HAナノゲルをマウス腹膜播種モデルに適用し、その腹腔動態や蛍光イメージングによる診断精度、抗腫瘍効果などの評価を行う。
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Research Products
(3 results)