Research Abstract |
本研究は電磁波を利用した肺癌の焼灼療法における焼灼支援を目的に研究を行っており, 本研究課題では, 肺癌へ発振する電磁波の周波数と生体臓器の電気的インピーダンスの関係性を取得, モデル化を行う. そして上記の関係性を肺内部の空気量と関連付け, 肺内部空気量の変動に併せて, 肺癌へ発振する電磁波の周波数を制御する. 本提案手法により, 空気量変動に併せて, 肺癌を高効率に焼灼可能とすることを目的とする. 本年度はブタ摘出肺と比較して, 厳密に実験評価可能であるブタ摘出肝臓を主な対象として, 電気的インピーダンスの電磁波周波数依存性の取得, およびモデル化を行った. 電気的インピーダンスの取得にあたり, インピーダンスアナライザーを用いて, 4 [Hz]~1000 [kHz]の周波数の範囲で測定を行った. 実験結果として, 電気的インピーダンス値の絶対値は電磁波の周波数が増加するに伴い, 減少していくことが確認された. また電磁波発振時に生体組織に印加される電圧と, 生体組織に流れる電流との位相差に特徴が現れた. 4 [Hz]から約10 [kHz]までは周波数の増加に伴い, 位相差は減少し, 約10 [kHz]以降は周波数の増加に伴い, 位相差が増加していった. 次に, 取得した肝臓の電気的インピーダンス特性を, 分数次階微分法を応用した等価回路モデルによりモデル化を行った. モデル化の結果, 高精度で実測値と一致した. 構築したモデルをもとに, 周波数を可変することでどの程度加熱量が変動するのかの数値解析を行った. 結果, 470 [kHz]を中心として, ±200 [kHz]周波数を変動させた場合, 加熱量を±10%程度変動することが数値解析により示された. ブタ摘出肺でも同様の実験を行ったところ, ブタ摘出肝臓と同様の傾向が示された。 今後はブタ摘出肺において, 電気的インピーダンスと肺内部空気量と加熱量の関係の実測評価を行い, 提案手法の評価を行う.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
全研究期間での達成度を100%とすると, 当該年度で全体の50%ほどの進捗が見られた. 当該年度では, ブタ摘出肝臓とブタ摘出肺を用いて, 電気的インピーダンスの電磁波周波数依存性の取得, およびモデルを構築した. この段階で本研究の仮説が肺癌焼灼に有効であることが示唆された. 次年度では個体数を増やした計測, および構築したモデルの改良を行い, 提案手法の最終評価として, 電気的インピーダンスと加熱量の関係を定量化する.
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Strategy for Future Research Activity |
次年度ではまず, ブタ摘出肺の熱物性値と電磁気学物性値の多孔質モデル化を行う. 多孔質モデル化により, 肺内部空気量変動に伴う熱物性値と電磁気学物性値の変動に関する数理モデルを構築することで, 肺の熱伝導率の値から肺内部空気量を推定する手法の評価を行う. そして, ブタ肺の電気的インピーダンスと加熱量と肺内部空気量変動の関係を定量的に評価する. 上述の結果を用いて, 焼灼時の肺内部空気量に対し, 加熱量が最大となる電磁波の周波数を決定し, 肺内部空気量変動に伴い, 電磁波周波数の制御による加熱量の制御を行う. 上記の提案手法の評価のため, 電磁波周波数を可変できる電磁波発振装置の開発も並行して行う.
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