Research Abstract |
本研究課題では, 眼電位を用いた意図的な瞬目(まばたき)の検出手法を提案し, 電動車椅子の制御へ応用することを目的としている. 瞬目により操作可能な電動車椅子を提案することで, 肢体不自由者の行動支援を行うことが可能となる. 本研究で用いる電動車椅子は環境情報を認識することができ, 周囲環境に適した速度調節機能や障害物回避機能により, 入力可能な情報量の少ない瞬目による制御でも安全性な走行を可能とする. これまでの研究では, (1)意図的な瞬目(随意性瞬目)の検出手法の提案, (2)実環境下における頑健性の調査, (3)提案手法と電動車椅子の連携および性能評価を行った. (1)では, 随意性瞬目を無意識に行う瞬目と区別して検出する手法を提案した. 提案手法では眼電位信号の波形特徴を利用することで, 振幅の個人差による影響を軽減し, 新規ユーザでも利用可能な検出を実現した. 計算機シミュレーションの結果, 98%の精度で随意性瞬目を検出可能であることが示された. (2)では, 眼球運動が多発する車椅子使用時を想定し, 眼球運動に対する随意性瞬目検出の頑健性を評価した. 本研究では, 被験者は頭部姿勢を固定した状態で, 指示された方向へ眼球を動かし, この時の眼電位を計測・解析した. 眼球運動時と随意性瞬目時の眼電位の波形特徴には有意な差があり, 90%以上の精度で分類可能であることが示された. したがって, (1)で提案された手法は, 眼球運動が生じる実環境においても利用可能であることが示された. (3)では, (1)および(2)で提案した手法を実際の電動車椅子に適用した統合システムを構築し, ユーザテストによる性能評価を行った, ここでは, S字型の実験路を走行し, 車椅子の走行経路と走行時間による評価を行った. 環境認識を考慮した速度調節機能を用いることにより, 本機能を用いない場合に比べて走行時間を大幅に短縮可能であることを示した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では眼球運動に対して頑健な随意性瞬目検出手法の提案を予定していたが, 年度初頭に提案した手法が既に眼球運動に対して頑健であることが示され, 研究計画を大幅に短縮することができたため, 当初の計画以上に進展している.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は, 提案した環境情報を考慮した電動車椅子の利用対象者の拡大を目指し, 脳波を用いた制御手法を提案する. 脳波を用いることで, 瞬発的な動作である瞬目が困難な肢体不自由者でも車椅子を使用することが可能となる, さらに, 眼電位と脳波を組合せて情報量を増大させることで, 瞬目による操作では不可能であった複雑な動作の実現が可能となる. 脳波により電動車椅子の制御を行うブレインコンピュータインタフェース(BCI)の研究は過去にも行われているが, 入力精度と速度の向上は依然として課題である. 平成26年度からは, 視覚刺激により誘発される脳波特徴を用いて高速かっ高精度なBCIの研究を行う予定である.
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