2013 Fiscal Year Annual Research Report
ビスフェノールAの核内受容体ERRを介したシグナル毒性の分子メカニズム
Project/Area Number |
13J05703
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
松尾 文香 九州大学, 大学院理学研究院, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 内分泌撹乱 / ビスフェノールA / ショウジョウバエ / 一塩基多型 / 歩行活動リズム / 多動性症状 |
Research Abstract |
ビスフェノールA (BPA)を原料とするポリカーボネート製の哺乳瓶は、ミルクへの漏出BPAの乳幼児脳神経系や生殖腺系へ及ぶ悪影響の懸念から、世界各国で製造・販売が禁止された。BPAが生体に悪影響を及ぼす、その分子機構の本質を明らかにするため、ヒトのモデル生物であるショウジョウバエにBPAを食餌させて歩行活動リズムへの影響を解析した。その結果、野生型と比較して活動量が大幅に増加した多動性症状のハエが現れることが明らかとなった。このことから、活動リズムの形成に関わる遺伝子(時計遺伝子)の塩基配列や発現量を解析することにした。 本研究では、朝方の活動形成に関わる神経ペプチドpigment-dispersing factor (PDF)をコードするpdf遺伝子に着目し、そのゲノムDNAとmRNAの塩基配列を解析した。その結果、3'UTRの長さが異なる4種のアイソフォームが存在することが分かった。また、3'UTRに9カ所の一塩基多型が存在し、野生型と多動性症状ハエではその変異率が変化していることが判明した。一方、ゲノムDNAの塩基配列には変異が見られないことから、mRNAに存在した一塩基多型は、DNAからmRNAへの転写の段階で引き起こされている可能性が考えられる。また、pdf mRNAの発現量を解析したところ、野生型に比べて多動性ハエで発現量が増加していることが分かった。さらにDNAメチル化状態も解析したが、差異は見られなかった。 ショウジョウバエのBPA食餌によるpdf mRNA、ゲノムDNAの塩基配列への影響について解析してきたが、BPAが生体に悪影響を及ぼす分子機構を解明するために、BPAのメチル基の1つが欠失したビスフェノールE (BPE)、2つとも欠失したビスフェノールF (BPF)を用いた比較実験を行うことにした。BPE、BPF食餌ハエの活動を調べると、BPF食餌ハエは継代1世代目から活動量の増強が見られ、BPA食餌の場合よりも早い世代からハエの活動に影響を及ぼす事が明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
申請書には1年目の計画として、BPA食餌多動性症状ハエのpdfm RNAのクローニング解析とリアルタイムPCRによる発現量解析を予定していたが、この予定を越えてBPE、BPF食餌ハエについてもpdfmRNAのクローニング解析、発現量解析を行った。さらにBPA、BPE、BPFによるDNAメチル化異常についても考慮し実験したことは、申請の段階ではほとんど言及しておらず、当初の計画以上に進展したと言える。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度はショウジョウバエの成虫を用いた研究を展開してきたが、今後はBPAの影響をより直接解析するために、ショウジョウバエ株化神経細胞BG2-c6細胞を用いて、BPA暴露によりpdf mRNAの塩基配列に一塩基多型や発現量の変動を引き起こすか、解析する。また、ヒト核内受容体のエストロゲン関連受容体γ型(ERRγ)にBPAが強く結合することが分かっており、BPAの内分泌撹乱作用は按内受容体を介したものであると考えられている。ショウジョウバエではBPAが結合する受容体は未だ同定されていないため、BG2-c6細胞を用いたレポーター遺伝子アッセイにより探索する。さらに、ヒト核内受容体ば一般にホモダイマーやヘテロダイマーを形成して機能することが知られており、ショウジョウバエにおいても核内受容体の複合体形成について調べる。
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Research Products
(11 results)